龍が最期に喰らうモノは
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表自ら赴いて来た。それも一万の兵を連れて。警戒心も不満も緩まっていない状態の華琳の領に、敢えてそうしてきた。
権力者の力を他勢力に示す通常の手段だが、少しばかり数が多すぎる。
万が一の為に兵を準備しなければならないのは言うまでも無く、従えている豪族達も警戒を強め、軍師達の思考にもいらない負担を掛け、官渡の戦に対しての準備も些か滞る。
ただ、華琳の心には感心と称賛が湧いていた。
――もはや先は無しとして軽く見ていた相手が、これほどまでに鋭い一手を差して来るとは……死にかけだとしても江東の虎を喰い殺した龍だという事か。否、死にかけだからこそ、私が脚を止めざるを得ない程の策を発してきた……そういう事か。
連合に参加しなかった時点で、劉表勢力は加速度的に広がっていく乱世の流れに飲み込まれるしかない……などと考えていた。
驕りを自覚する。読み切れなかった不可測は一つ一つと繋がり、連鎖反応を以って、人であれモノであれ何かしらを華琳から奪うだろう。
――どう来る……ある程度の予測は立っていても確証が無い。孫呉側に対する牽制の一手と、微々たるモノでもこちらの動きを縛り付ける為の動きではある。攻めて来たわけでは無いのだから、袁家の手助けをするでも無いのは明白。劉表側の利点は数あれど、狙いの全ては……直接対峙して読み切るしかない、か。
秋斗達と真桜を送り出してから、劉表の娘と徐庶が劉備の元に向かったとの情報は、華琳の耳には既に入っている。
劉備軍との繋ぎ役として。そして後継者を孫呉との戦から遠ざける為も狙いの一つであるのは予想に容易い。初めから孫呉に勝つ気が無いようにも見える動きは少しばかり不可解なささくれを華琳の思考に齎している。
劉表と孫呉の戦は避けられない。憎しみの禍根は根強く、また、乱世を抜けて行く力を得る為には勢力圏の拡大は必須である為に。
南方に対して西方はどうか。
現在の劉備軍は劉璋の元に身を預け、南蛮との国境の郡に配置されているという。
――体の良い防衛役としての扱いではある……が、劉璋はこれで……官渡の戦中か後に表舞台から消える事になるだろう。劉備は……否、諸葛亮は南蛮を喰らう、そう確信している。私達に対抗する力を手に入れるには、希少な物資を手に入れられる南蛮は防衛し続けるよりも属国、いや、劉備軍ならば同盟として手に入れなければならないのだから。
勧善懲悪は人の思考に甘く浸透する毒であり、願いである。南蛮を支配下に置けば“劉備軍らしいやり方”で、兵力の低下を抑えつつ益州を掌握出来る。
――他勢力の事は、今はいい。それよりも劉表に意識を向けなければ。
自分ならどうするか、方々へと駆け巡る思考の全てを一つにずらした。これから行われる会談の為に。
あの愛しい敵対者を叩き潰
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