龍が最期に喰らうモノは
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少しばかり跳ねた陳宮は、数瞬の後にコクリと頷いた。
「では劉表殿、そなたの誠意は受け取った。だが、二度目は無い事……努々忘れることなかれ」
「曹操殿の慈悲に感謝を。オレに二度目は無い事、心にしっかりと刻んでおく。それじゃあ……洛陽出立の準備があるからこれで。見送りは不要だ」
短く呆気ない終わり方だった。
黒の衣服に金髪を棚引かせる龍は、一寸だけ勝利の笑みを浮かべて華琳を一瞥し、謁見の間を後にした。たたっ、と着いて行く陳宮は……一度たりとも霞の方を見ずに去って行った。
「……此処より我らは本格的に動く。気持ちを切り替える為に、夜までに城を“掃除”させておきなさい」
御意……と皆の返答は鋼のように冷たく重い。
静まり返る謁見の間の空気は異質。粘りつく嫌な気配は、華琳の声を以ってしても払拭されなかった。
†
行軍の準備を言いつけ、ねねと劉表の二人はとある店に脚を運んでいた。
大陸でも三本の指に入るのではないかとまで噂される名店、娘娘。彼女達が料理を楽しんでいる個室の名は『竜の間』と言った。
彼の二つ名に因んで名付けられた四霊の幻獣を冠した四つの部屋があるのだが、それらは『夜天の間』の一ランク下の部屋である。
武力の高い給仕と店長が居る事と、店長自身が政治の黒い部分を嫌っている為に情報の漏洩はどの個室でも有り得ない。
現在、劉表達二人の為に、武器無しの近衛兵を二人、入り口に立たせる事も許す程。店長自らが、官位の高い上客が来た時は情報の秘匿に関しては説明に当たってもいる。
余談ではあるが、料理を楽しむ時間を蔑ろにする輩が忍び込んだ際、店長と給仕たちによって捕まえられ、街の支配者に突き出す事になっている。そして驚くべき事に、未だ捕縛率十割を下げた事は無い。
「……だりぃ……なんだよコレ。なんっだよコレはぁ!」
所狭しと机の上に並べられているのは大半が甘味であった。一つ一つと口にして、劉表は人生の幸せを謳歌していた。
「れ、恋殿にも……食べさせてっ……あげたかったのです……うぅっ……」
対して、ねねは涙を零しながら、この世のモノとは思えない程に美味しい料理を食べていた。
満足げな表情でそれを見た店長は、紳士的に一礼をしてから口を開いた。
「劉表様、陳宮様、ご注文の品はお揃いですか?」
「おうよ! 後な、あんたの料理、最っ高にうめぇ!」
「なのです! 美味しくて……本当に美味しいのですよっ! 持ち帰りしてもいいとは本当なのですか!?」
「構いません。持ち帰れるのは日持ちのするモノのみ、材料と他の注文の関係で数を限定させて頂きますが」
「キヒ、なら持てるだけ頼む。会計の時に伝えるぜ。それでいいか? ねね」
「
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