龍が最期に喰らうモノは
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る。
相手の部下が失態をしでかしてくれれば、交渉事も格段にし易くなるのは自明の理。
ただ……稟の若干緊張した面持ちから、自分達がどういう狙いを以って此処を訪れたのか分からない……それが分かっただけでも、劉表としては上々だった。
「お気づかい無く。文官であれどねねは体力も鍛えているので、このくらいの速さは平気ですぞ。劉表様も、お心遣いありがとうございます」
上出来だ。
内心で呟き、劉表はねねの頭をわしわしと撫でた。小さく頷くねねの瞳には知性の輝きと、昏い色の炎が宿っている。
病床に伏していたという情報はある程度の軍ならば入っているはずである。曹操軍ならば当然の事。
こうして無事である姿を見せてしまえば、病状も、回復の見込みも……病気についてあらゆる秘匿の強化を行えて、相手側の思考と情報網に波紋を齎せる。ねねが敢えて触れない事によって、より強固にそれの枠を強めた。
ねねはそれを見越して、自分と劉表を比べてみせた。情報分析に重きを置く軍師に対しての一手は鋭く、脳髄の片隅にしっかりと刻み込まれる。
その証拠に、稟の眉が僅かに寄り、尚鋭く瞳が輝いた。誤魔化すように瞼を閉じ、眼鏡を上げた。
「……分かりました。では、参りましょう」
そう言いながらも速度を緩める。
同時に、二対一では分が悪い、と判断した稟は、自分から情報を漏らさない為に口を閉ざす。
――今はこれで十分だ。“ねねに”この軍師の性格の切片を読み取らせられただけでも大きい。それも……お前なら分かってる、よな?
後ろの二人はにやりと笑みを向け合わせて、それぞれで今からの交渉に対しての算段を組み立てて行った。
†
劉表が直接来る、というのは完全に華琳の予測の範囲外であった。
――死に淵でわざわざ……“こんなくだらない事”の為に乗り込んでくる方がおかしい。
情報に誤りがあったのか、それとも不可測として病状が改善したのか……劉表の事は孫策に任せるつもりでいたが、こちらも調べておく必要が出てきたのは確かだ。
前の戦では、華琳の軍はいらぬ被害を受けたと言えよう。黒麒麟と徐州獲得を念頭に置いていたが、袁家の戦略によって外部から攻められる可能性は……確かにあったのだ。その予防策を一つだけしかしていなかったのが悪かった。
劉表軍の参戦。全体的な兵の被害としては、秋斗と雛里の策の上乗せ分で予定よりも抑えられているが、戦以外の面で面倒が一つ増えたカタチとなる。
部下である黄祖の暴走とするだろうからと、頸を送って来られる準備はしていた。自身の怒りを見せる為に、使者を散々に言い負かせて尊厳を叩き潰し送り返すのも良し、黄祖の頸を孫呉に送りつけても良し……そう、考えていたのだ。
だというのに、劉
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