第4話 士官学校 その2
[3/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
は多くの問題点があります」
俺のあからさまな反抗的態度に、“ウィレム坊や”もすぐに気がついて気持ち悪い声を止め、両拳を握りしめている。右横ではウィッティが心配そうに俺を見つつも、僅かに椅子から腰を上げ重心を俺寄りにしている。俺が殴られそうになったら、俺を突き飛ばして身代わりになるつもりなんだろう。まったく困った同室戦友だ。
「まず大火力部隊を要塞近辺にまで送り込ませねばなりません。要塞主砲の有効射程も出力も艦砲のそれとは比較にならず、要塞駐留艦隊もいる以上、接近することだけでも困難が伴います」
「次に要塞を直接攻撃できるだけの兵器となると、艦砲などではなくレーザー水爆ミサイルの艦隊規模発射しかありません。しかも数度にわたってです。レーザー水爆は有効射程が短いだけでなく、実体弾なので充分な補給がなければたちまち火力不足に陥る事になります」
「さらに直接攻撃を行う部隊を要塞駐留艦隊から防御する艦隊も必要になります。直接的にも間接的にも。当然ながら要塞駐留艦隊の規模よりも大きくなければなりません。場合によっては三個、いや五個艦隊を動員することになるでしょう。彼らに十全な戦闘能力を持たせるには、大規模な後方支援体制を用意せねばなりません」
「ついでに申し上げるならば、仮に要塞攻撃が失敗した場合、失われる戦力も膨大になります。それを補いつつ、国防体制を維持するのは現在の同盟の国力では困難です」
ここまで言い切って、俺は一度大きく呼吸した。目の前の“ウィレム坊や”は顔を真っ赤にして俺を睨み続けている。
はっきりいえば俺の答えには幾らでも反論のしようがある。的に察知されず接近するなら妨害電波などの支援方法もあるし、原作通りミサイル攻撃専用の艦艇を用意したうえで、囮としての大兵力も動員可能だ。だが最後の一点だけは反論のしようがない。もっともあの要塞を陥落させた方法は全く違うのだが。
「ゆえに、大規模な戦力を維持・運用できるだけの充分な国力を整備することが、戦争勝利の方法であると自分は考えております」
この言葉が止めとなった。“ウィレム坊や”は何も言うことなく赤い顔のまま『フン』と鼻息を吐くと、取り巻きを連れて大股でカフェを出て行く。ホーランドが椅子から立ち上がった時、正直殴られると思った俺は全身に力を込めたし、ウィッティも腰を浮かせたが、立ち去っていく姿を見て俺達は崩れるように椅子へ腰を落とした。
「……お前が殴られずにすんで良かったよ。ヴィク」
「……正直俺は、アイツが殴りかかってくると思ったんだけど」
「いやいや“ウィレム坊や”も少なからず教訓を得てくれたようで何よりだ」
お互いの情けない顔を見て溜息をつく俺とウィッティだったが、肩を落とし背中が丸まっている頭上から浴びせられた暢気な声に、俺達は疲れ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ