暁 〜小説投稿サイト〜
ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第3話 士官学校 
[4/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
やはり“ウィレム坊や”だった。
「「ご用でしょうか、ホーランド候補生殿!!」」
「用があるから呼んだんだ。そこに座れ」
「「はっ」」
 バカ丁寧に敬礼する俺達を一睨みすると、自分の取り巻きの一部にずれるよう顎で指図する。同期生相手にその扱いはどうかとは思うが、怒るのも怒らないのも取り巻きA・Bの心の持ち方一つだし、下級生の俺が斟酌する話ではない。遠慮なく俺とウィッティが空いた席に座ると、ドンと太い腕で安造りのテーブルを叩いた。

「貴様達には聞いておきたいと思った。特に第二分隊でもお前達は目立つ二人だからな」
「は」
「二人とも父君が将官だというのは聞いている。そこで聞きたいのだが……」
「失礼ですが、それは違います」
「どう違うのだ?」
 話を止められ明らかに不愉快な表情になったホーランドに対し、俺は遠慮なく答えた。
「私の父もウィッティ候補生の父も既に戦死しています。私の場合は叔父に引き取られましたが、ウィッティ候補生はトラバース法によりアル=アシェリク准将閣下のお世話になっていたのです。故に父親が将官であるというのは不正確です」

 それが俺とウィッティの共通点。高級軍人であった父親が戦死したことと、扶養先も高級軍人の家庭であること。その事実を知っている教官達は、俺達に対して他の候補生とは時折ではあるが、若干違った態度で接することがある。

 ゆえに一般家庭から努力で這い上がってきたと思っている奴や、同じ養子先でも佐官・尉官の家庭に送り込まれた奴から俺達二人はあまり好かれていない。特に平凡そのものの俺達がエリート揃いの戦略研究科に在籍しているのは『何らかの意図』が働いているのではないか、と勘ぐる奴すらいる。逆に取り巻きになって、卒業後の配属先に配慮してもらおうと考える奴もいた。そういう奴らに対して俺達二人は明確に隔意を持って接してきた為、最近ではごく普通の同期生すら必要以上に俺達に接近することがなくなってきている。

 だが、この自分の能力に過剰なほど自信を持っている上級生ですらも、そういう奴らと同じように考えているのかと思うと俺は軽く失望せざるを得なかった。
「……わかった。不正確だったのは認めよう。だが俺が聞きたいのはそういうことではない」
 逆らって来た事に対する不満よりも、俺の呆れたと言わんばかりの視線に自身を軽く見られた事に屈辱を感じたであろうホーランドは、小さく舌打ちしてからそう応えた。
「貴様達は子供の頃から軍事教育を受けてきたと思うが、戦争に勝つためには何が必要かも教わって来ていると思う。受け売りでも構わん。是非教えてもらいたい」

 俺はホーランドがそう言うことすら信じられず一瞬呆然とした。左横に座るウィッティも同じように困惑している。だが数秒して頭に血が回り始めた俺は今更ながら納得した。
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ