第3話 士官学校
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、次の週には“ウィレム坊や”に遭遇したので、もう驚くことは諦めていた。まだ会った事はないが後方支援科四年生にはアレックス=キャゼルヌの名前も確認した。
これからの同盟、それも軍事的な意味に絞ってのみ考えれば、俺の年齢を境にして上下五年の世代の士官という存在は極めて貴重だ。帝国領侵攻時には三七歳から二七歳。いずれにしても働き盛りで軍の中核となる存在になっているはずだ。もしかしたら好き嫌い関係なく彼らと積極的に交流し、金髪の孺子による侵攻を阻止できるだけの戦略と戦力と叶うのであれば国力を構築することが、転生者として同盟に産まれた俺のめざすものではないか?
勿論わざわざ金髪の孺子が元帥や宰相になるまで待ってやる必要もない。同盟軍が金髪の孺子をその砲火の下に捕らえた事は幾度としてあった。その機会を逃さず仕留めればいい。ついでに一緒にいる赤毛のイケメンも仕留める事が出来れば、自由惑星同盟は少なくとも近々で滅亡などという事は回避できる、と思う。
「おい、ヴィク!!」
突然体を揺さぶられ、俺は慌てて眼を瞬いてから小さく首を振ると、目の前にウィッティの顔があった。
「お前、時々そういう風に突然意識を飛ばすことがあるが、それは一体どういう病気なんだ? もしかしてオカルト的な『なにか』なのか?」
「いや、単に空想好きって奴だ。むしろ非常に想像力が逞しいと言って欲しいね」
「……士官候補生として、それがいい事とは思えないが、お前、今のうちに夕飯を食べないと拙いんじゃないか? 今晩は当直巡回だろ」
俺はウィッティの言葉に、一度目を閉じて今日の予定表を思い浮かべる。一八三〇時、第五限終了。一九〇〇時から二〇三〇時までが希望者の自習時間。その間の二〇〇〇時から士官学校内の閉門及び巡回業務がある。たしかにウィッティの言うとおりだ。
「おっしゃる通りだ。我が高級副官殿」
「おい!! いつから俺はお前の高級副官になったんだよ」
ウィッティが容赦なく俺のちょっと短めに切りそろえられた琥珀色の頭を叩く。確かに痛いが、後に引きずるような強さではない。彼の気遣いに感謝しつつ、俺は“ランニングで”痛む体を起こすと彼と共に食堂へと向かった。
だがこのタイミングで食堂に行ったのは明らかなミスだった。
かなり広い食堂ではあるが、雑然としているわけでもない。四隅がそれぞれの学年ごとに占有され、食堂の中心あたりが学年間の交流スペースになっている。学年を跨いでの部活動や同好会活動の打ち合わせなども行われているわけで、上級生と下級生の『美しき』上下関係もそこかしらで見受けられるわけで……
「おい、そこの初年生二人。第二分隊のヴィクトール=ボロディンとフョードル=ウィッティだったな」
こっちに来い、と言わんばかりに大きな声と手招きで俺達を呼び寄せるのは
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