第五章
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第五章
「七つ違いですね」
「そうだね。ええと、お嬢ちゃんの名前は?」
「柚子です」
年齢の後でだ。名前を話した彼女だった。
「宜しく御願いします」
「そう、柚子ちゃんね」
「それでなのですけれど」
何故かだ。修治から見ればそうなることでだ。柚子は顔を赤らめさせた。そうしてそのうえで修治に対してこう言うのだった。
「修治さん、よかったら」
「うん、よかったら?」
「コーヒーの他にです」
おずおずとして彼に話す。
「スイーツはどうでしょうか」
「スイーツ?」
「うちのお店はケーキやクレープの他に日本のものもあるんです」
「浪漫だからだね」
「はい、和風でもありますから」
それでだ。あるというのである。
「何がいいでしょうか」
「ううん、それだったらね」
「お勧めは」
修治が言う前にだ。柚子が言ってきた。
「白玉あんみつです」
「白玉だね」
「はい、それです」
それだというのである。
「それはどうでしょうか」
「わかったよ。それじゃあね」
笑顔で頷く修治だった。柚子のその言葉にだ。
そうしてそのうえでだ。彼女のそのお勧めの白玉あんみつをコーヒーと共に頼んだのだった。しかし連れて来た先生はというとだ。
コーヒーだけだった。そしてだ。
その空いている席に息子と向かい合って座ってだ。こう我が子に言うのであった。
「何か違うな」
「違うって?」
「お父さんはコーヒーだけだぞ」
先生が言うのはこのことだった。
「それで何で御前はお店の人からお勧めまで来るんだろうな」
「さあ。けれど何かさ」
「何か?」
「悪い気はしないね」
修治はにこにことして父親に言葉を返した。
「いや本当にね」
「女の子のお勧めはか?」
「そうだよ。父さんだって母さんに勧められたら悪い気はしないよね」
「怖いな」
先生が言うのはそちらだった。
「それは怖いな」
「怖いんだ」
「それは結婚してからわかる」
先生は実は恐妻家だ。この世で怖いのは奥さん以外にない。要するにこの世で最も恐れているものは奥さんなのである。そういう人なのだ。
「よくな」
「そうなんだ。結婚してからなんだ」
「とにかくだ」
ここでだ。話を変える先生だった。
「御前、まさかな」
「まさかって?」
「とりあえずコーヒーを飲め」
一旦我が子にそれを勧めた。すると彼は実際にそのコーヒーを飲んだ。
それからだ。再び我が子に問うたのであった。
「どうだ?美味いか?」
「いいね、この味」
にこりと笑ってだ。父に答えた。
「美味しいよ、凄く」
「また来たいか?」
「うん、来たいよ」
にこりとした笑顔をそのままにしての返事だった。
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