おまけ詰め
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ゃないし確たる証拠もないのなら、普通ならばそんな事実は存在しなかったと考えるべきだろう。だが、「あいつら」が絡んでいるのならばそのような超常現象的な部分が絶対にないとは言い切れない。
「調べるか?」
「私はいいわよ」
「じゃ、まずは対象をその車の持ち主と仮定して・・・いってらっしゃい」
「いってきます」
そのやり取りの瞬間だけほんの小さな微笑を浮かべたメリーは、「私メリーさん。いま、貴方の後ろにいるの・・・」と儀式を経て俺の前から姿を消した。
メリーはいつも無表情だが、時々俺の感情に呼応するように笑顔を見せる時がある。達成感を感じた時、美味しい食べ物を食べた時、こうして家族のように送り出す時・・・(・・・というより、送り出す相手がいると実感する瞬間のうれしさか)。それは単に俺の無意識を拾ってまねているのか、誰かの求めたメリーさんを再現しているのか判然としない。
本人曰く、しょうもない無意識は一時的に反映されてもすぐに剥がれていくそうだ。だから突発的なものではなく、メリーの意識に基づく笑顔であることは分かっている。
そして、メリーの自我と彼女を司る集合無意識の反射行動は、その境がとても曖昧だ。彼女も都市伝説として少し特異な存在でもある。つまり、あの笑顔に人間的な感情が混じっているのかは不明である。
「ま、どっちでもいいか。メリーにとってはどちらでもいい事だろう」
ふと窓から外を見下ろすと、この課に最近所属になったお仲間の大江戸のコペンが駐車場に入ってきたところだった。・・・・・・見間違いでなければ、助手席にメリーが乗っているように見えるのだが?
おもむろにポケットから携帯を取り出した俺は電話帳からその同僚に電話をかけた。
ピリリリリリ!ピリリリリリ!・・・ピッ!
『せせせ先輩!?メリーちゃんが、メリーちゃんが突然うちの車に!?俺、何が何だか・・・!』
「落ちつけ大江戸。一度目を閉じて深呼吸して、もう一度見てみろ」
『は、はい!すぅー・・・はぁー・・・』
瞬間、俺の意志を悟ったメリーがすぐさま時空を超えて俺の隣に戻ってくる。
『せせせ先輩!メリーちゃんが・・・メリーちゃんがいなくなりましたぁぁぁ!!!』
「私メリーさん。いま、援助課のデスクにいるの」
『あ、あれ・・・?あれぇ??』
「お前疲れてんだよ。コーヒー淹れておいてやるから早く出社しろ」
『はぁ、了解です・・・』
お前が噂の大本かよ。何やらかしたんだお前。
――後に稜尋は本物の妖怪の存在を知ることになるのだが、それはまた別の話である。
あとがき:
最速奇譚は、異常な存在なのに何故か一般に溶け込んでるけどそのことを自覚してない感じの人達が仲良くなっちゃう話です。だけど大きな事件には決して絡まない日
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