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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百六十二話  呪縛からの解放
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ではないな、呪縛だ。地球に住む人間はそれにしがみついた。それが地球教団の成立に繋がった。一千万の人間が資源も産業も枯渇した地球に残ったのはその呪縛が有ったからだと思う。

だが銀河連邦政府にとって地球教団の成立は如何見えたか。地球は過去の栄光に縋りつこうとしている、何も反省していない、そう見えたのではないだろうか? 地球を見詰める連邦の目はより冷たさを増したに違いない。そして視線が冷たくなればなるほど地球は過去の栄光にしがみつき連邦を恨んだ……。悪循環だ。

悪循環は銀河連邦から銀河帝国に代わっても続いた。九百年に亘って続いたのだ。今更地球に温情など示しても何の意味も無い。汚染を除去して経済援助などしても無駄だ。地球の人類に対する敵意はそんな事で消えはしない。九百年に亘って続いた呪縛の恨みはそれほど軽くは無い。

マキャベリの政略論には次の二つの事を軽視してはならないと書いてある。一つ目は忍耐と寛容では人間の敵意は溶解するものではないという事。二つ目は報酬や援助を与えても、敵対関係を好転する事までは出来ないという事……。元の世界の事を考えてみればその通りだと納得出来る。日本がアメリカに完膚なきまでに敗れながら友好を結べたのはアメリカにソビエトというカードが有ったからだ。日本から見ればアメリカよりもソビエトに対して不信感、恐怖感が強かった。アメリカはそれを利用して日本と同盟を結んだ。そうでなければ日米の関係はもっと冷えた関係になったはずだ。

リヒテンラーデ侯が地球に対して温情では無く廃棄を考えたのは正しいと思う。残念だが帝国には地球に対して使えるカードは無い。そして地球教団が考えた事は地球の呪縛そのものだった。人類はもう地球の呪縛から解放されるべきだと俺は思う。人類を宇宙へ送り出すという役割を終えたのだから……。




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