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無欠の刃
下忍編
君麻呂
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ラでも治せるはずの傷だ。
 それでも、手が震えてしまうのだ。
 失敗して死ぬわけじゃないと分かっているのに、なのに、手が震えるのが止まらなくて、怖い。
 怖くて怖くて、目をつぶってこらえるように歯を食いしばりながら、サクラは必死に思い出す。
 今までの修行を、努力を、そして、先ほど立ち上がったイナリの姿を。
 追手である忍者と対峙していて、気がそれてしまった時に、母親であるツナミをみすみす浚われかけるという真似をしてしまった。
 その時、イナリが母親を守ろうと立ち上がってくれたおかげで、サクラはツナミを守れた。
 震えていて、怯えていて、苦しいだろうに辛いだろうに、泣いていて、それでも立ち向かった。

 「イナリ君も頑張ったんだから、私も、頑張らなきゃね」

 恐怖で震えていたのに、母親を救おうと、彼は立ちあがったのだ。
 だから、サクラも立ち上がらなければいけない。

 「大丈夫、修行でやったんだから、いける、はず!」

 深呼吸をし、サクラは思い出す。
 チャクラのコントロールは全てを平等に、ゆっくりと伸ばして、表面は水平にするように。
 先程まで震えていた手をカカシの体に当て、チャクラを込める。
 しゅーと、緑色のチャクラがカカシの体にある傷を治療していく。

・・・

 一方、サスケはこの状況に、一体どうしたものかと内心で頭を抱えた。

 サクラがカカシを治療し、カトナに引きずられるように、九尾のチャクラがどうやら漏れ出しているナルトが再不斬に相対し、どうやら、ナルトの九尾のチャクラを貸してもらっているらしいカトナが君麻呂と白の相手をし、サイがタズナを守っているこの状況。


 まさに混沌(カオス)


 どうしたものかと思いながら、サスケは頭を抱える。
 カトナを助太刀することはたやすい。しかし、この状況でサスケが飛び込めば、ただでさえ混沌としたこの状況が更に『混沌』にふさわしい場になってしまうだろう。
 この状況を好み、更に材料をぶち込みそうな湖面がいないという事に若干安堵しながらも、この場の状況をいったん落ちつけた方がいいだろうと思ったサスケの思惑を超え、



 最後の材料が、ぶちこまれる。




 骨を構え、カトナをチャクラを切り裂いていた君麻呂が咳を続けたかと思うと、血を吐いて、倒れる。

「君麻呂君!?」
「ごほっ、ごほっ、がはっ、げほっ」

 君麻呂は咳を繰り返しながらも立ち上がろうとするが、しかし、咳は止まらない。

 「…だから、チャクラを使うなって言ったのに」

 そんな、静かなカトナの声が響くと同時に、白がふりかえる。

「どういうことですか!?」
「…そいつの病気、私が治してやってた。だから、昨日忠告してやった」

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