第2話 別れと出会い
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年下と言えば年下だ。
「……時々だが、ヴィクトールと話していると何故か普通に大人と話しているような気がするよ」
「すみません、生意気でした」
「いや、責めているんじゃないよ」
叔父は俺の頭に手を伸ばすとくしゃくしゃと掻き毟り始めた。
「ヴィクトールは軍人になるつもりだとアントン兄から聞いていたから言うわけではないが、部下に対して友情の差を付ける事があっても構わない、と私は思っている。性格も能力も異なる人間だし、すべて平等に扱うとなれば、それでは軍の機能を十全に果たすことはできないし、大体人間でなくなるだろう。だけど死んだ後に平等に扱わないのは間違いだ。死者は任務の為に死んだという一点において平等であるのだから」
「……」
「だから“ヴィクトールを”養子に欲しいという少将の気持ちが純粋な誠意から来ているのはわかるけど、彼の為にも何としても阻止しなくてはいけない。そういうことだよ」
俺はグレゴリー叔父の言葉を頭の中で反芻しながら、沈黙した。
軍人になって、自由惑星同盟を滅亡から救う。それはこちらの世界に転生してからの目的だった。艦隊を率い、原作を知っているというある意味でチートを駆使して、優位に戦いを進める。それが尊いことなのか、または正しい事なのかは正直俺にはわからない。だが軍人になって一兵でも指揮をするという事は、部下の命運と部下の家族の命運を預かるということだ。それが父親の戦死という事実を持って、今になってようやく身に染みて感じられる。
前世日本で銀河英雄伝説のゲームをしている時、些細なミスで数千隻の艦艇を失う事もあった。あの時はすぐに借りは返せると軽く考えていた節がある。同盟軍の駆逐艦一隻には士官・下士官あわせて一六四名が乗り組んでいる。その一隻が吹っ飛べば一六四名の人生がそこで途絶えることになる。もしその中に自分の親しい友人がいたとしたら、そして友人に孤児が残されたとしたら、おそらく今の俺はシトレ少将と同じ事をするだろう。
だが多数の艦船を麾下とする提督であるならば、その行動は正しくない。どんな戦闘においても犠牲はゼロではない。完全勝利という事もないわけではないだろうが、滅多にあることではない。正面艦隊決戦となれば犠牲者の数は万の単位だ。残された孤児の数をすべて救う事など一人の人間に出来ることではない。
つまりこれから俺のやろうとしている事は、そういう事なのだ。戦争の犠牲者は数字ではないが、数字でもあるということを。
そこまで考えを巡らしていた時、突然甲高い音がリビングに響き渡った。思索の海から現世に意識を取り戻した俺は、ソファから立ち上がると音のした方向へと視線を向ける。そこには割れたグラスと、お腹を抱えて蹲るレーナ叔母の姿があった。
「レーナ!!」
「叔母さん!!」
俺とグレゴ
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