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泣きぼくろ
第四章
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第四章

「凄いわね」
「あんた日本ハムファンだったわね」
「ええ」
 まさにだ。その通りだというのだ。彼女は幼い頃から日本ハムファンだ。日本ハムが札幌に来た時はこのうえなく喜んだのである。
「そうだけれど」
「しかも札幌ドームっていえば」
「サッカーもできるわよね」
「あんたサッカー観戦も好きだしいいじゃない」
「ううん、けれど」
「けれど?」
「問題はどういう人かよ」
 まさかそこに勤めている相手の場所、その球場に行けると聞いてそれだけで頷く訳にはいかない。律子もそのことは弁えていた。
 それでだ。彼女はこう母に言うのだった。
「性格が問題あるとかそういうのだったらね」
「じゃあそういうのも見るのね」
「そうよ。話はそれからよ」
 真剣な顔でだ。母に言うのだ。よく見ればほくろがない以外は自分に似ているその顔を見てだ。
「それから決めたいわ」
「じゃあお見合いするのね」
 母はだ。娘の今の言葉をそう受け取りこう返した。
「そうなのね」
「そうさせてもらうわ。まあ確かにね」
「札幌ドームね」
「その人も日本ハムファンなら」
 それに越したことはないというのだ。実は巨人ファンならば断るつもりだった。小笠原のことをだ。彼女は今もよく覚えているのだ。
「いいわね」
「しかもお仕事もね」
「札幌ドームよね」
「確かな職場だし。後は」
「どういう人かね」
「それが第一だし」
 人間性、それがだというのだ。
「それも見させてもらうから」
「ええ。じゃあそういうことでね」
「お見合いさせてもらうわ」
 こう母と話してだった。彼女は振袖を用意してそのうえでだ。お見合いの用意をするのだった。そうして出会った相手はというと。
 背が高くだ。白い顔をしている。奇麗な黒髪を前だけ伸ばし清潔な感じにしている。目ははっきりとしていて細面で何処か日本人離れした印象を与える顔をしている。特にその目だ。
 黒い筈なのに青い印象を与える。その白さも加わりだ。彼そのものを青い印象を与えるものにさせている。ダークブルーのスーツもだ。その青をさらに印象付けていた。
 その青い彼がだ。見合いの場の料亭において向かい側に座っている赤い振袖の律子にだ。笑顔で話すのだった。
「はじめまして」
「はい」
 律子は緊張している面持ちで彼の挨拶に応えた。彼は落ち着いた動作で静かにこう言ってきた。その時に律子の左目の付け根を見てふとそれが心に残った。そのうえで彼女に名乗る。
「橋口春馬といいます」
「橋口さんですか」
「はい、そうです」
 口調もだ。落ち着いたものだった。
「宜しく御願いします」
「こちらこそ」
 こうして二人の交際がはじまった。お見合いからだ。
 何度も会い話しているうちにお互いのことがわかって
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