第1話 転生
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俺は子供らしく無邪気な口調で言うと、父は怪訝な顔をすることなく笑顔で再び俺の頭を掻き毟るのだった。
だが俺の無邪気な予言はあっさりと覆される。
宇宙暦七七二年八月一四日。こちらの世界の母エレーナが交通事故死。
原因は暴走した無人トラックとの衝突。体の太った交通警官が特に遺族でもないのに憤って説明してくれた。なんでも間違った情報を物資流通センターのオペレーターが入力したらしい。その為、無人タクシーとトラックのそれぞれが機能不全を起こしたらしく、たまたまボルシチ用の野菜を買いに出かけていた母がそれに巻き込まれてしまったというわけだ。
前世は幸いなのか両親は俺が死ぬまでピンピンしていたから(つまりは前世両親に対して親不孝をしたわけだが)、親の葬儀に出るというのは凄く不思議な感覚を味わった。
こちらの世界の父アントンは出征中で家を留守にしていたから、葬儀は叔父のグレゴリー=ボロディンが取り仕切ってくれた。子供の目から見ても勇猛果敢で剛毅な父と比べて、七歳年下のこの叔父は同じ同盟軍軍人でありながら貴族か学者を思わせるような落ち着いた容姿と性格をしている。軍服を纏っていても醸し出す雰囲気が“紳士”なのだ。ちなみに今二六歳で中佐と言うから父よりも出世が早い。
「ヴィクトール」
聞くだけで人の心を落ち着かせる奥行きのあるアルトの声が、地中へと埋められる母の棺を眺める俺の背中からかけられる。
「アントン兄さんが出征中の間は、私の家に来てくれないかな」
「でも、家を守るのは母さんと僕の仕事です」
「勿論そうだ。だが八歳の子供が一日二日ならともかく、これからずっと一人で官舎に住むのは危険なことだ」
そう言うとグレゴリー叔父はポンと俺の肩に手を置いた。それだけで安心を感じる。
「アントン兄さんが出征中の時だけでいい。私の家に泊まりなさい。私にとっても君は家族なんだから」
三週間後、出征から帰ってきた父アントンとグレゴリー叔父との間で家族会議が開かれ、グレゴリー叔父の言うとおりになった。両親の祖父母はことごとく鬼籍に入っていたし、それ以外に選択肢がなかったのも確かだ。
「ヴィクトールがウチに来てくれるなんて!!」
そういいながら子供の俺を抱き上げて頬ずりするのは、グレゴリー叔父の奥さんのレーナ=ビクティス=ボロディン。つまり俺の義理の叔母さん。元自由惑星同盟軍中尉で、あの真摯なグレゴリー叔父が土下座してまで口説いたというだけあってスタイル抜群の南方系美女。バリバリ北欧系で俺から見ても控えめだった母とは正反対に陽気で気さくで……
「アントン義兄さんにはずっと出征していてもらいたいわね」
「おい、レーナ」
そして大変遠慮のない人だった。横で見ていたグレゴリー叔父がさすがに突っ込みを入れて、父に頭を下げている
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