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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第1話 転生
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は同盟軍に入って手助けしてやりたい。決してイケメンチート軍団たる帝国軍の向う脛を蹴り飛ばしてやりたいってわけでは……多分にあるかもしれないが。

 とにかくただ漫然と軍に入って職業軍人をしているだけではあのイケメンチート軍団に勝てるわけがない。頭の中に残っている銀河英雄伝説のストーリーを活用する為にも、同盟軍内においてある程度の実力や権限を持っていなければ意味はない。せめて同盟と同盟軍に対する致命的な一撃となる帝国領侵攻を阻止するなり被害を軽減しなければ。逆算すれば二九年後。俺が三二歳の時だ。その時までに何とか将官位になっていれば……

「どうした、ヴィクトール?」
 机を挟んで反対側に座っていたこちらの世界の父が、俺の顔を怪訝な表情で見つめている。原作ではボロディン提督としか記載されていないからこの父が第一二艦隊司令官とは限らないのだが、今は二六歳の同盟軍少佐で第三艦隊に所属する小さな戦隊の参謀をしているらしい。順調に昇進している事は間違いないらしく、官舎近所に住む他の軍人家族からも期待の若手と言われている。もちろんあの微妙な口髭はまだなかった。

「お父さん。僕は軍人になる。艦隊司令官になって、お父さんと一緒に帝国軍と戦う」
「ほう、そいつは頼もしい」
 そう言うと父アントン=ボロディンは俺の小さな頭を机越しに大きな手で掻き毟った。前世とは全く異なる琥珀に近い俺のようやく伸び始めた髪がガシガシと音を立てる。
「だがな、艦隊司令官になるのは大変だぞ? しっかり勉強して、士官学校に入って、さらに優秀な成績をとらなきゃ艦隊どころか一隻の軍艦すら任せてもらえないかもしれない」
「なら頑張る」
「よく言った。それでこそこのアントン=ボロディンの息子だ」
 さらに強く俺の髪を掻き毟る。その父の手を俺の横に座る母がやんわりとほどくと、すこし影のある笑みを浮かべながら父に言った。
「あなた。決して無理をなさらないでください。前線に立って戦って武勲を立てるより、生きて帰って来てくれることの方が、この子にとっても幸せなのですから……」
「心配するな、エレーナ」
 そう答えると父は母に向けて俺も驚くほど鋭い眼差しで応えた。
「今の上司のシドニーは俺の同期だが、これまであいつと組んで負けた事がない。勇敢だが無謀な事は命じない良い指揮官だ。大丈夫、安心しろ」
「ですが……」
「俺が出征中に困った事があったら、弟に相談しろ。俺に似ず万事に慎重な奴だが、それだけに信頼に値する」
 父の言葉に母が唇を噛みしめるように頷く。原作通り父がボロディン提督であるなら、あと二九年は生きている。だがここで原作がそうだからと言って両親が安心したり喜んだりするはずがない。せめて今はこの二人の子供であるべきだ……
「大丈夫、お父さんは絶対艦隊司令官になるよ」

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