第四章
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第四章
「店を出る時にかよ」
「そうだよ。今言ったら不自然だろ」
「そもそもそんなでかい花束持って前に出してな」
「それ自体やばいしな」
「あの娘気付いたんじゃないのか?」
「気付かれたか?」
まるで工作を見破られた工作員の様な顔になってだ。彼は言った。
「まさか」
「どうだろうな。とにかくな」
「今はどうでもいいだろ」
「後でいいんだよ」
友人達は少しずつ穏やかな顔に戻って彼に話す。
「とにかく焦るな」
「落ち着け」
「落ち着いていけ」
このことを強く言う。くれぐれといった口調でだ。
それでだ。また話す彼等だった。
「まああの娘の名前はわかったな」
「そのことは覚えたよな」
「間違いないな」
「ああ、絶対に忘れるか」
このことは確かに返す剛士だった。
「何があってもな」
「じゃあ食べた後でな」
「それでいいな」
「その花束渡すなりしろよ」
「食べた後でな」
このことに念押ししてだった。彼等は剛士を止めたのであった。
その話をしてからだ。彼等は。
それぞれカレーを食べてだ。それからだった。剛士にあらためて問うた。
「よし、行け」
「御前のやりたいようにやれ」
「いいな」
彼の背中を押しての言葉だった。
背中を押してからだ。彼等はさらに話した。
「何があっても暴れるなよ」
「いいな、何があってもな」
「それは守れよ」
「おい、俺が振られるっていうのかよ」
剛士はすぐにだ。強張った口調で返した。
「何だよ、それって」
「とにかく言え」
友人達が今言う言葉はこれだった。
「いいな、言えよ」
「それはちゃんとしろよ」
「ちゃんと言えよ」
「わかった」
これでいいと返してだった。そのうえでだった。
カウンターに向かう。そのカウンターには英梨がいる。その彼女にだ。
剛士は勘定を済ませてからだ。こう言った。
「あの」
「あの?」
「これを」
一旦言葉を止めてからだ。そのうえでだ。
ずっと持っていた紅薔薇の花束を出してだ。彼女に言った。
「それでなんですけれど」
「それで?」
「俺と付き合って下さい」
思い切ってだ。告げたのだった。
「俺と付き合って下さい。お願いします」
「賽は投げられたな」
友人達はそれを聞いて述べた。
「これでいいな」
「ああ、後はな」
「結末だけだな」
こうだ彼等だけで話すのだった。そうしてだ。
彼等は見守るのだった。その結末をだ。
英梨は剛士の言葉を受ける。彼の目もだ。そのうえでだ。
彼の花束を受け取った。それから笑顔で言うのであった。
「はい」
「はい?」
「私でよかったら」
こう告げるのだった。
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