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ファミレスのあの娘
第三章

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第三章

「ご注文は」
「御名前は」
「あ〜〜あ、こいつなあ」
「やっちまったな」
「やっちまったよ」
「何やってんだよ」
 友人達は彼の言葉を聞いてだ。呆れた顔でそれぞれ言った。思わず言ってしまったのだ。
「そこでそれはないだろ」
「言ったら駄目だろ、ここでそれは」
「普通に注文したらいいだろ」
「それで何でそれなんだ?」
「全く。こいつはな」
「何やってんだよ」
 席で思わず言ってしまった。彼等も失態だが剛士の失態は彼等以上の失態だ。その失態のままだ。彼は彼女にさらに尋ねるのだった。
「あの、それで御名前は」
「私の名前ですか」
「はい、何ていうんですか?」
 席に座ったまま彼女を見上げてだ。必死な顔で問うのだった。
「一体」
「西村です」
 彼女はまずは姓から答えた。それからだ。
「西村英梨といいます」
「西村英梨さんですね」
「はい」
 剛士の問いにこくりと頷く。
「そうです」
「わかりました。覚えました」
 僅かな時間で心の中で何度も彼女の名前、今聞いたばかりのそれを呼び返し繰り返してだ。それで刻み込んでそれから彼女、英梨にまた言った。
「それじゃあですけれど」
「ご注文ですよね」
 あくまでウェイトレスとして事務的に応える英梨だった。
「それは」
「あっ、こいつチキンカレーです」
「それです」
「それ御願いします」
 友人達は咄嗟にだ。こう英梨に注文した。
「チキンカレー大盛り御願いします」
「もう激辛のを」
「うんと辛くして下さい」
「激辛ですか」
 英梨は彼等の言葉を聞いてだ。オーダーに書く用意をする。
「それでいいですね」
「はい、それで御願いします」
「チキンカレー激辛大盛り」
「こいつはそれです」
「わかりました。以上ですね」
「そういうことで」
「御願いします」
「じゃあそれで」
 こう言ってだ。剛士が花束を出す前、その仕草を察してすぐに代わりに注文してだ。彼の暴走を止めて英梨を去らせた。そうしてからだ。
 彼等は剛士に対してだ。呆れた顔で言うのであった。
「御前何やってんだよ」
「いきなり何したんだよ」
「それはないだろ」
 こうだ。呆れた顔で言うのである。
「あのな、そういうのは後にしろよ」
「食べ終わって店を出る時でいいだろ」
「それで今何でそれだよ」
「駄目か?」
 本人だけがわかっていない。戸惑いながら彼等に返す。
「今すぐにじゃ駄目か」
「駄目に決まってるだろ」
「そういうことしたら駄目だろ」
「何考えてるんだよ」
「じゃあどうしろっていうんだよ」
 剛士は今度は首を捻る。そしてまた言うのだった。

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