幽鬼の支配者編
EP.20 ワタル迷走
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ると、台所の方を見た。ワタルもその視線を追うと、当番制なのか、夕食の準備をしているロメオの姿が。
なんとなく事情を察したワタルは視線を伏せると謝り、マカオはロメオに聞こえないように声のボリュームを下げて話し出した。
「……ごめん」
「いや……まあ、お前の予想通りだよ。俺の初恋はロメオの母親さ。ずっと一緒だったんだが、仕事に夢中になってた俺に愛想尽かして出て行っちまったが」
「……その……やっぱ、今でも好きなのか?」
「ああ。初恋っつーのは、誰にとっても特別なもんだ。男でも女でも……多分な」
そう言ったマカオの顔には少し陰りがあったが、それでも笑みがあった。
幸せそうな笑みを浮かべる彼に、ワタルは疑問を覚えた……フラれたのにまだ好きなのか、と。それが顔に出ていたのか、マカオはジョッキを傾けると続けた。
「あのな……アイツがいたから、ロメオ・コンボルトが生まれたんだ。アイツを忘れるっていうのは、ロメオに対する最悪の裏切りなんだよ」
「裏切り……」
「ああ。ただでさえ、母親がいないってだけで不自由な思いさせちまってるんだ。ロメオにとって誇れる父親として、アイツを忘れるのだけはしちゃいけないんだよ」
愛する息子のために。未練にも聞こえるようだが、ワタルにはそれが恥ずかしいものには思えなかった。
「色々と戸惑ったりするのは仕方ないさ。ただ素直になって、まっすぐぶつかればいいんだよ。どんな結果に終わろうが、それは間違いなくお前の財産になる。それだけは確かだ」
経験に基づいて話すマカオ。今のワタルには、どうやっても真似できないことだ。無理してやっても白々しく聞こえるだけだろう。
「素直になって、か……」
「ああ、そうだ。……それから……」
にこやかに大きく頷いたマカオだが、もう一度台所を見た。
ロメオが夕食の準備に没頭しているのを確かめた彼は、さらに声を潜める。
ワタルはそれに疑問を覚えたものの、グラスの水で喉を潤していると……
「あー……あとはあれだ。お前がどうしてもエルザの事で辛かったりするんだったら……その時は我慢する必要はない。エルザを抱いちまえ」
マカオがとんでもない事を言ったため、気管に水が入って思いっきりむせてしまった。
「!? ゴホッゴホッ……い、いきなり何を……」
「どうしたの、ワタル兄?」
「い、いや、何でもないぞ、ロメオ。ちょっとむせただけだ」
「そ、そうだぞロメオ。あ、飯はまだか?」
「まだかかるよ、父ちゃん」
「そ、そうか……ゴホン」
「(声小さくしたのはそういう事かよ……)」
ロメオに感付かれそうになったが誤魔化しに成功した二人は安堵の息を漏らす。
だが、咳払いと共に真剣な表情になったマカオに、先ほどの
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