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剣の丘に花は咲く 
第十三章 聖国の世界扉
第三話 甲板の上で
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返るセイバーを見て、士郎はニヤリとした笑みを口元に浮かべた。

「ええ、驚きました。二度程彼の授業を受けた事がありますが、その時から他の魔術師とは違うように感じてはいましたが……」
「魔術師と言うよりも錬金術師みたいな人だからなコルベール先生は。ん? いや、まてよ。この世界では錬金術師も魔術師も同じようなものみたいだから別段可笑しくはないのか?」
「しかし、彼のお陰で予定より早く着く事が出来そうです。ミスタ・コルベールには感謝しなければいけませんね」
「指令では“至急”とあったから早く着くことはいいことだからな。まあ、礼には今度ブランデーケーキでも焼こうかと思っている。この間料理長にブランデーケーキの作り方を教えたんだが、その時味見を頼んだら、随分と気に入っていたからな。まあ、本人は色々と飛行テストが出来ると喜んでいたからそこまで気にしなくてもいいとは思うが」

 士郎はロマリアまで“オストラント号”で送ってくれとコルベールに頼んだ際、彼が『飛行テストが出来る』と飛び跳ねて喜んだ姿を思い出し、冷風でかじかむ頬を苦笑に歪ませた。
 と、その時、苦笑を浮かべる士郎の下から低い恨みがましい声が響いた。

「……シロウ。私はその事を知らないのですが」
「は?」
「味見です」

 くるりと身体を回転させて士郎に向き合ったセイバーは、士郎を仰ぎ見てずいと顔を寄せた。

「何故、その時私を呼ばなかったのですか」
「あ、い、いや。その、だなセイバー。あの時は実験みたいなものだったし、材料も少なくて量もなかったし」
「それが何か関係があるのですか」
「その、だから。味見と言っても初の完成品だ。料理長と互いの労を労わるという意味でも食べてみたいじゃない、か……」

 言葉が段々と尻すぼみに消えていく。
 その原因となるのは自分を見上げてくるセイバーだ。夜の闇の中、星明りに照らされ浮かび上がるセイバーは見惚れる程美しい。だが、今はその美しさが怖かった。
 歴戦の勘により危機を感じ、咄嗟に後ずさろうとする士郎を、しかし事前に察知したセイバーの手が制する。手や服を掴むのではなく、胸の上にそっと添えるように手を置くことで士郎の動きを全て事前に制するセイバー。絶妙な手腕である。士郎の行動を物理的ではなく精神的に動きを制しているのだ。身動きが取れなくなった士郎の背中に粘性のある汗が染み出し、冷えた風に吹く度に背筋に寒気が走る。
 『動けばヤられる』―――その本能に訴え掛ける警告に士郎が凍りついたように動けない。一分か、それとも十分か? 不意にセイバーは小さく吐息のような笑みを零すと、士郎に背中を向けた。そして、吹き寄せる風に身を押されたように身体を逸らしたセイバーは、後頭部を士郎の厚い胸板に当てると光り輝く星に埋め尽くされた夜空を見上げその目
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