第十三章 聖国の世界扉
第三話 甲板の上で
[7/10]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
っ」
セイバーが話しの途中で小さくくしゃみをした。髪を押さえていた手を外し慌てて口を抑えたセイバーが、肩を縮こませつつ身体を小さくする。顔に掛かった金の髪の隙間から赤く染まった頬が覗き、士郎は顔を背け頬をポリポリと数度掻き、大きく一歩横に身体を動かすと、風よけになるような位置に移動した。
無言のまま時間が過ぎる。
その沈黙を先に破ったのはセイバーであった。
「ティファニアの事ですが……ありがとうございました」
「何がだ?」
士郎の問いに苦笑で返したセイバーは、舷側に近づくと手を掛け眼下に流れる雲に視線を落とした。セイバーの後を付いて舷側まで傍に寄った士郎も、同じように船縁に手を置いて眼下に視線を向ける。
「―――彼女が最近様子がおかしい事には気付いていたのです。ですが、結局私は何も出来ませんでした」
「……俺はただ話を聞いただけだぞ」
後悔を含んだ声に、士郎は大したことはしていないと言う。すると、セイバーはチラリと隣の士郎に視線をやり。
「私は、その話を聞くことすら出来ませんでした」
「……そ、そのだな、傍にいるだけでも―――」
別段避難されているワケでもないのだが、士郎は何とはなく居心地が悪いものを感じた。慌てた様子で士郎が言い訳じみた言葉を口にすると、セイバーは視線を再び下に落としてしまう。月明かりに照らされたセイバーの頬が、士郎の目に何となく膨らんでいるように見えた気がした。
「……別に気にしてはいませんので、気を使わなくても結構です」
一見すれば何時もと変わらないように見えるセイバーの様子。しかし、セイバーを良く知る士郎は、何処となくむすっとしたオーラが漂っているのを敏感に感じ取っていた。
そのため横に一歩セイバーに向かって移動し近づいた士郎は、横目でセイバーを見下ろしながら爆弾を処理するかの如く緊張に満ちた声で慎重に尋ねてみる。
これをほっておくと、後々厄介な事になることをよく知っていたためである―――経験的に。
「……本当に気にしていない?」
「はい」
「まあ、確かにテファのことはセイバーの方が良く知っているしな」
「そうですね」
「テファの事を信じていたからこそ、テファが自分から相談に来るまで待っていたんだろ?」
「……否定はしません」
「……本当に怒ってない?」
「ええ」
「……クッキーをどうぞ」
「許します」
「…………」
一つ一つ仕掛けられたトラップを解除するかの如く慎重さでセイバーの本心を探っていた士郎は、この問題解決にはクッキー一袋で解決できると判断を下し。懐からこう言った時のための非常用のクッキーを懐から取り出すと、それをセイバーに献上した。どうやら幸いにも今回は士郎の予想が当たり、セイバーは差し出されたクッキーが
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ