第十三章 聖国の世界扉
第三話 甲板の上で
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を鳴らした。
「ま、テファは色々とあるから気楽に楽しむだけではいられないか。それに、こうして落ち着く暇もなく、あちこち連れ出している俺が偉そうに言うのも何だしな」
「そっ、そんなことは……」
顔を下に向けたまま、ごにょごにょと口の中でティファニアが呟くと、士郎は撫でていた手に力を込めくしゃりと一度強く撫でる。反射的に顔を上げたティファニアの頭から手を離した士郎は、顔を上げたティファニアに向かってニヤリとした笑みを向けた。
「だから俺が言えることはな、テファ。周りを気にせず好きな事をしろ」
「好きなこと、ですか?」
楽しげに告げる士郎の言葉を、ティファニアは首を傾げながら繰り返す。
「考えるな、感じろ。今は理由とかは考えずに、ただ感じるままに行動してみろ。それで少しは気持ちが楽になるし……そのうち森から出た理由も思い出せるだろう」
「好きな事、ですか?」
「ああ。お前は少々我慢しすぎる所があるからな。少しばかり羽目を外したくらいが丁度いい」
「好きな、こと……羽目を、外す」
眉間に皺を寄せて考え込み始めたティファニアの様子に苦笑を浮かべた士郎は、人差し指でティファニアのオデコを少し強めにつついた。小さな悲鳴を上げてティファニアが顔を上に逸らす。
「っ、な、なんですか?」
「だから考えすぎるなと言っているだろうが……全く、仕方のないやつだ……まあ、そうそう変えられるようなものでもないが。何かあれば、何時でも相談に来い。こう言った手合いは得意とは言えないが、人に話せば楽になることも多いからな。話なら何時でも聞くぞ」
「……はい……ありがとう、ございます」
笑いかけてくる士郎から逃げるように顔を下に向けたティファニアは、つつかれたおでこを片手で抑えながら、伏せた頭を小さくこくりと縦に動かした。
轟々と唸り声のような低い風を切る音が耳に響く中、吹き付ける風に細めた目で、一人甲板に立つ士郎は、夜の闇の中月明かりに浮かび上がる白い雲が横切っていくの姿を追いかける。
高度数百メートル―――身を切るような氷着いた空気の中、士郎は息を吐くと、微かに白染む吐息が雲のように流れていく。解け消えていく白い吐息を追い掛けていくと、眼下に広がる闇に沈んだ海原が目に飛び込んできた。
見つめていると吸い込まれそうになる程の闇の深さから逃れるように空を見上げると、そこには満天の星空が広がっている。
「美しいですね」
風になびき揺れる金の髪を片手で押さえつけながら、何時の間にか寄り添うように隣にセイバーが立っていた。しかし、士郎は驚きを見せることなく最初から知っていたかのように頷いてみせる。
「ああ……寒くはないか?」
「これぐらいなら平気で―――くし
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