第十三章 聖国の世界扉
第三話 甲板の上で
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リミル教の総本山である。ブリミル教の聖地に住むエルフと敵対している宗教団体の総本山で、自分がエルフの血を引いている事がバレてしまえば、一体どうなることになるか、ティファニアはアルビオンから出たこの一ヶ月の間で十分以上に身に染みて理解していた。
そんな場所へと向かっている事から湧き上がる不安。
だからと言って、不安だからトリステイン女王からの直々の命令を断ることなど出来はしない。ウエストウッド村を出た後の自分や孤児院にいる子供たち全員の後見人でもあるトリステイン女王の命令だから―――だけではなく、外の世界に出ると決意した自分自身、そして森を出る事に協力してくれたセイバーや士郎たちを裏切る行為でもあるからだ。
そう……断れるわけがなかった。
アルトやシロウさんは、もしバレたとしても、絶対に手出しはさせないと言ってくれたけど……やっぱり怖いものは怖い……。
それでも昼間はまだ大丈夫だった。
ルイズや水精霊騎士隊のみんなが傍にいて、アルトやシロウさんもいたから……。
でも、夜になって一人になってしまうと―――もう駄目。
寝てなんかいられない……。
アルビオンの森で使っていた硬い布団とは違う、魔法学院の寮にあるベッドと同じぐらい柔らかなベッド。何時もならば横になると直ぐに眠ってしまってたのに、今日は何時までたっても目が冴えて眠れなかった。
だから、星でも見れば少しは気が紛れるかと思って、こうして甲板まで来たのだけれど……逆効果だった。
空を行く船から見上げた星空は確かに息を呑むほど美しかった。
でも、眼下に広がる夜の闇は、底の見えない湖を覗き込んでいるようで……酷く、恐ろしくて……。
気晴らしに来たのに、逆に不安が更に募ってしまい、思わず叫びだしたくなってしまう始末。
弱気になっていくのが止められず―――思わず……言葉が、ぽろりと口から溢れる。
「……どうして、わたし……森を出たんだろ」
口から溢れた言葉。
どうして森を出たのか?
そんなの分かりきっている。
自分の事だ―――当たり前に分かっている。
外の世界を見たい―――その思いで森を出た。
その筈だ。
森から出れば、どんな危険があるかは昔から想像はしていた。森を出ればきっとたくさん嫌なこと、苦しいことがあるだろうと。特に自分の体には半分“エルフの血”が流れている。“エルフ”を恐る人間が多く住む外の世界に出れば、普通の人間よりも負うリスクは大きい事もキチンと分かっていた。それでも、大丈夫だと、外はそんな嫌なことばかりじゃなく、楽しいこと、素敵なこともあると―――何故か、無邪気にもそう思っていた。
そして、わたしは森から出た。
森を出て、トリステインに行って、魔法学院に入学して……色々な事があった。
嫌な
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