暁 〜小説投稿サイト〜
剣の丘に花は咲く 
第十三章 聖国の世界扉
第三話 甲板の上で
[2/10]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
―――士郎の頼みにコルベールは快く頷いてくれた。
 そして現在、ロマリアへと向かう“オストラント”号に乗り込んでいるのは、操縦士であるコルベールと士郎を始めとする水精霊騎士隊一行、護衛対象のルイズとティファニア……だけでなく、何故か無理矢理付いて来たキュルケとタバサを含めた合計十一名であった。
 出発の前、タバサとキュルケが付いてくることを反対した士郎だったが、『船を動かす人員が必要でしょ』やら『学院長の許可は得ている』等といった反論を受けたことにより、最終的には乗船を許してしまうことになった。
 実の所、他にもシエスタやジェシカ、ロングビルも付いていこうとしていたのだが。任務が任務であることから、ただの一般人であるシエスタとジェシカがついていく事は流石に出来ず。また、ロングビルはロングビルで、いくら優秀であっても休み過ぎだと学院長やら他の教師から諫められたことから、今回の件は渋々断念したのであった。
 ……士郎たちが学院長室に出発の挨拶に行った際、オスマンの顔にいくつもの引っかき傷や青タンがあったが……多分、今回の件とは関係ないだろう……。
 そうして、指令を受けた翌日。
 そんなこんなで無事トリステインを出航した士郎たち一行は、騒がしくも無事に最初の一日を終えようとしていた。

 



 遍く世界を照らしていた太陽が地平線の彼方へと沈み、代わりに無数の星々と二つの月が淡く世界を浮かび上がらせる頃、雲の上にいるからか、地上よりも強い月明かりに照らされた甲板の上に、一人の少女の姿があった。夜風にたなびく黄金色の髪は、月の光を浴びて眩いほどに輝いている。舷側に手を掛け、唯一の明かりである星空を見上げている少女の唇は薄く開き、そこから震えた吐息が漏れていた。不意に甲高い音が鳴り、冷えた刃となった一辻の風に少女が切りつけられる。ぶるりと身体を震わせ身を縮こませた少女は、寒さから身を守ろうと強く己の身体を抱きしめた。少しでも寒さを紛らわせようと、豊かな胸がぐにゃりと大きく歪む程強く自らの身体を抱きしめながらも、少女は何故か風が吹き付ける甲板から去ろうとはしなかった。
 震える身体に手を回し、甲板上でただじっと星空を見上げて佇む様は、何か幼い迷い子が途方に暮れて立ち尽くしているように見える。
 実際、それは別に見当違いなものではなかった。
 一見すれば、寒さを忘れ満点の星空に心を奪われているようにも見える少女の心を満たしていたのは、星の美しさに対する感動などではなく、夜の闇よりも深く黒く重々しい不安であるからだ。
 そして、その不安の源はこの船の行き先が関係していた。

 少女―――ティファニアの視線が上から前へと、船の向かう先へと向けられる。

 連合皇国首都ロマリア―――別名宗教国家ロマリア、ハルケギニア最大の宗教であるブ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ