第六章
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第六章
「何時でも待ってるわ」
「この店でジャズを聴いてカクテルを飲みたくなったら」
「それでいいわね」
「ああ。俺も指定席はな」
ヘンリーもだ。こうキャスリーンに言うのだった。
「ここだからな」
「私の隣にするのね」
「ここでいいよな」
「構わないわ」
すっとした大人の笑みで答えるキャスリーンだった。
「少しでも嫌なら嫌ってはっきり言うから」
「いいね。わかり易くね」
「あくまではっきりとわかり易く」
こんな風にも話すキャスリーンだった。
「それがアメリカの女じゃない」
「だからだよな。それではっきりと言うんだな」
「嫌なことも嫌ってね」
「わかったさ。じゃあ俺もはっきり言うな」
「席はここなのね」
「ああ、ここだ」
彼が今座っているだ。その席だというのだ。
「ここにいるからな」
「わかったさ。それじゃあな」
こんな話をしてであった。
二人はこの店では隣り合って飲みジャズを聴くのだった。マスターはその二人にあえて何も言わずに己の仕事に徹していた。そんな中でだ。
あるヘンリーがだ。こうキャスリーンに尋ねた。
この日も二人で隣り合って飲んでいる。その中でだ。
彼はキャスリーンにこう尋ねたのだった。
「一つ聞いていいか?」
「今日は何かしら」
「あんた。いつもここじゃ一人だけれど」
「二人よ」
しかしこう言うキャスリーンだった。
「そうじゃないかしら。二人よね」
「おっと、そういえばそうだな」
「そうよね。二人よね」
微笑んでだ。ヘンリーに言うのである。
「いつも二人よね」
「そうだな。それじゃあな」
「どうだっていうの?まだ尋ねることはあるの?」
「店の外じゃどうだい?」
キャスリーンに一本取られたがそれでもだ。取り返す為に今度はこうした感じで尋ねるのだった。
「この店の外ならね」
「二人になりたいわ」
今度はこう返すキャスリーンだった。
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