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ジャズクラブ
第五章
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第五章

「そうしようか?」
「それができるのね」
「できるさ。じゃあしてみせようか」
「ええ。どうして見せてくれるのかしら」
「今かかっている曲」
 その曲は何か。その話だった。
「俺はこの曲はな」
「知っているの?知らないの」
「知らない」
 一言だった。言ったうえで微笑んでいる。
「全然知らない。聴いたことのない曲だ」
「あら、有名な曲なのに?」
「けれど知らない。知らないことは知らないって言えるんだよ」
「それが素直で正直だっていう根拠ね」
「これで信じてくれたかい?」
「信じるには根拠が弱いかしら」
 くすりと笑ってこう答えるキャスリーンだった。
 しかしそれだけではなくだ。彼女はヘンリーにこうも言った。
「けれど。いいわ」
「信じてくれるんだな」
「そうさせてもらうわ。そうだったのね」
「知らないことは知らないと言う」
 ヘンリーはここではやや誇らしげに話した。
「それが賢い生き方さ」
「正直に、素直に生きるのが」
「人間はそれが一番いいんだよ」
 少し聞いただけでは清らかな生き方だ。だが彼は同時にこんなことも言った。
「そうすれば人様から信用してもらえるしな」
「打算もあるのね」
「人間打算もないとな」
「駄目だっていうのね」
「ああ。正直と打算」
 その二つを一つにしてキャスリーンに話すのだった。
「俺はそう思うけれどな」
「そうかもね。人間ってのは単純じゃないから」
「だからだよ。それじゃあ納得してくれたんなら」
「それなら?」
「この曲のこと教えてくれるかい?」
 くすりと笑ってだ。キャスリーンにその彼の知らない曲のことを尋ねるのだった。
「よかったらな」
「いいわ。それじゃあね」
 キャスリーンもだ。その申し出に笑顔で応えた。そうしてだった。
 彼にその曲のことを話す。それからだった。
 ヘンリーはその教えてもらった曲を聴きながらだ。キャスリーンにこんなことも話した。
「成程ね。話を聞けばな」
「余計にっていうのかしら」
「ああ、余計にいい曲に思えてきたな」
 そうなったとだ。キャスリーンに話すのである。
「それじゃあ。もっとな」
「聴くのね」
「聴かせてもらうさ。この店でな」
「他の曲もよね」
「勿論さ。それはあんたもだよな」
「ジャズは好きだし」
 その音楽から答えるキャスリーンだった。
「カクテルもね」
「ああ、この店のカクテルは確かにな」
「いいわね」
「ああ、いいな」
 笑顔で話す彼だった。酒についてもだ。
「また機会があればな」
「飲むのね」
「飲むさ。あんたもだよな」
「勿論よ。それじゃあね」
「それじゃあ?今度はどうしたんだい?」
「この店での私の指定席はここだから」
 このだ。カウン
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