暁 〜小説投稿サイト〜
ワンピース〜ただ側で〜
番外16『海坊主』
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が勝たなければ意味がない。今回はたまたま生き残れてはいるが、もしもハントがたった一人でクロコダイルに挑んでいたならば既に命はない。

 このグランドラインという海で、敗北=死という考えは決してシビアすぎるものではない。
 あくまでも海がなければ使えない技、それでも海があればこれだけの技が自分にも使える。
 その事実にハントは拳を強く握りしめる。

「……俺はまだ……強くなれる」 

 ハントはクロコダイルに負けた。
 その事実はもう過去のもので、すなわちそれが覆ることはない。けれど、得たものはあった。

「こうやって成長していけばいいのか?」

 己の強さを求めるハントの問いは静まり返った海の穏やかな波にのまれて流れ去る。

「……っあ! 俺も早くメリー号に戻らないと! ……たぶんまだ海軍の応援とか来るだろうし」

 海に潜って、ハントはその姿を海面から消す。
 誰もいなくなった海に、ハントの問いはただゆらゆらと。
 どこへ流れ着くのか。
 まるで、それが答えであるかのように、海は穏やかに揺れていた。




 静かになった海で、珍しくメリー号から喧噪が聞こえない。

「もう追ってこねぇな海軍の奴ら」
「んー」
「んー」
「んー」
「……ハントが9割方沈めてたみてぇだし、どっちにしても問題はねぇが」
「んー」
「んー」
「んー」

 ゾロの重ねての問いに、船員たちもまた重ねて気の抜けた返事とともにテキトーに頷く。

「あのな……なんだよその気のねぇ返事は」

 ゾロの呆れた言葉に、ゾロ以外の全員が同時に「さみしー」とめそめそしながらつぶやいた。
 結局ビビはハントの想像通り船を飛び出して海賊に、という選択肢を選ぶことはなかった。ただ、彼らのこれからの立場は違えどずっと仲間だと、その左腕の×印に誓って彼らは笑顔で別れた。

 お互い、涙は浮かんでいたがそれでもそれは確かに笑顔だった……の、だが。
 やはり寂しいものは寂しいわけで。

 時間がたてばたつほどにビビやカル―がいないという事実が、仲間の一人と一羽がいなくなったことを強調するかのように彼らの胸を締め付ける。ビビとカル―が来ないであろうことをある程度は想像していたハントももちろん寂しいことに対して例外ではなく、ルフィたちと同様に肩を落としている。

「そんなに別れたくなきゃ力づくで連れてくりゃよかったんだ」

 ゾロの少々乱暴な、とはいえ海賊らしいと言われれば確かに海賊らしい言葉に、だが一同の反応は芳しくない。

「うわぁ野蛮人」

 チョッパーを筆頭にゾロへと悪口を言う。

「最低」

 ナミが。

「マリモ」

 サンジが。

「三刀流」

 ルフィ――「待てルフィ、3
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