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26歳会社員をSAOにぶち込んで見た。
第九話 Cooreat
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いでしょ? あれ彼じゃないと出来ないから。 ああ、知ってる?
次に実写化するあのドラマ。 ネットではあの先輩が適役なんて言われてるんだよ。
見た目似てないけど、やっぱ演技に定評があるからねぇ。 それに比べて君。 モブキャラ以下だよねぇ。
こういう職場にいたいなら、アシでもやれば長生きできるんじゃないかな。 いや、これ嫌味じゃなくてね?」
 わからない……僕と、あの先輩の演技の違いが。
 心はこもってるんだ……ちゃんと、なりきっているんだ……!
「あー、須藤クンね。 まぁさっきの演技はまだ大目に見るけど。 あの死亡シーンはないでしょ……。
ギャグでやってる? これそういうドラマじゃないから。 ちょっとさぁ。 いい加減にしてよ。 こっちも君みたいなのに金払いたくないんだよね」
 わからないっ……!
 ただ、涙が出て、悔しい。
 人が死ぬなんてわからない、見たことがない。
 本当の喜びも、わからない。
 ただ、悲壮な演技だけがうまくなっていく。
 知らないことはわからない。 知らないことは出来ない。
 監督の言っていることがわかった。
 僕にはリアリティが足りない……。
 圧倒的な経験不足……想像力の欠落。
 そんなもの、学べるわけがない。
 ドラマのようなことが、現実で起こるわけがないんだ。
 そんな時、たまたま息抜きで買ってきたSAO。
 元々ネットゲームは嫌いじゃなかったし、ふと、やってみようと思った。
 それで始めたこのゲーム。
 ただの偶然で出会っただけなのに……。
 この世界は……僕が求めるものが、全てあった。
 デスゲーム宣言時の、あの絶望感。
 人の本物の悲鳴、叫び、嘆き。
 初めて敵を倒した時の喜び。
 仲間との一体感。
 そして何より……。
 リアルな死が、身近で見れる。
 初めて見た死は、転落死だった。
 第一層で、スタート直後の数時間後に、一人が飛び降りた。
 あの光景だけは、忘れられない。
 同時に、石碑に記された事実を見た時のあの衝撃。
 身近な死を認識させてくれた、あの恐怖。
 それがずっと、脳裏に焼きついて、離れてくれない。
 けど、今なら、できる。
 転落死する演技が……。
 現実に戻った時、きっと監督は褒めてくれるだろう。 僕を認めてくれるだろう。
 どこでそんな演技を覚えてきたんだって。
 だから、僕はもっと褒めてもらうために、自分を認めてもらうために。
 様々な人の、様々な表情、感情を知らなければいけない。
 そのために、SAOでは善人を演じ続けている。
 コミュニティの輪を広めて、常に人の表情、感情を知り続けるために。
 だが、最近それも、マンネリ化してきた。
 僕に向けられる感情は常に一定で。
 僕が見る表情は殆ど変わらない。

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