第九話 Cooreat
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いでしょ? あれ彼じゃないと出来ないから。 ああ、知ってる?
次に実写化するあのドラマ。 ネットではあの先輩が適役なんて言われてるんだよ。
見た目似てないけど、やっぱ演技に定評があるからねぇ。 それに比べて君。 モブキャラ以下だよねぇ。
こういう職場にいたいなら、アシでもやれば長生きできるんじゃないかな。 いや、これ嫌味じゃなくてね?」
わからない……僕と、あの先輩の演技の違いが。
心はこもってるんだ……ちゃんと、なりきっているんだ……!
「あー、須藤クンね。 まぁさっきの演技はまだ大目に見るけど。 あの死亡シーンはないでしょ……。
ギャグでやってる? これそういうドラマじゃないから。 ちょっとさぁ。 いい加減にしてよ。 こっちも君みたいなのに金払いたくないんだよね」
わからないっ……!
ただ、涙が出て、悔しい。
人が死ぬなんてわからない、見たことがない。
本当の喜びも、わからない。
ただ、悲壮な演技だけがうまくなっていく。
知らないことはわからない。 知らないことは出来ない。
監督の言っていることがわかった。
僕にはリアリティが足りない……。
圧倒的な経験不足……想像力の欠落。
そんなもの、学べるわけがない。
ドラマのようなことが、現実で起こるわけがないんだ。
そんな時、たまたま息抜きで買ってきたSAO。
元々ネットゲームは嫌いじゃなかったし、ふと、やってみようと思った。
それで始めたこのゲーム。
ただの偶然で出会っただけなのに……。
この世界は……僕が求めるものが、全てあった。
デスゲーム宣言時の、あの絶望感。
人の本物の悲鳴、叫び、嘆き。
初めて敵を倒した時の喜び。
仲間との一体感。
そして何より……。
リアルな死が、身近で見れる。
初めて見た死は、転落死だった。
第一層で、スタート直後の数時間後に、一人が飛び降りた。
あの光景だけは、忘れられない。
同時に、石碑に記された事実を見た時のあの衝撃。
身近な死を認識させてくれた、あの恐怖。
それがずっと、脳裏に焼きついて、離れてくれない。
けど、今なら、できる。
転落死する演技が……。
現実に戻った時、きっと監督は褒めてくれるだろう。 僕を認めてくれるだろう。
どこでそんな演技を覚えてきたんだって。
だから、僕はもっと褒めてもらうために、自分を認めてもらうために。
様々な人の、様々な表情、感情を知らなければいけない。
そのために、SAOでは善人を演じ続けている。
コミュニティの輪を広めて、常に人の表情、感情を知り続けるために。
だが、最近それも、マンネリ化してきた。
僕に向けられる感情は常に一定で。
僕が見る表情は殆ど変わらない。
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