第17話:ただ自分を超えるために(2)
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願いします」
「うん、よろしく桜井」
たどたどしい口調でぺこりとお辞儀をする桜井の様子に、俺は優しい気持ちになって穏やかに答えた。桜井の持つ癒し効果が半端ないことを、身を持って知った瞬間だった。
挨拶を済ませて、カゴの中の花飾りを手に取り、胸元に着けようとした。が、その手は胸元まで10cmまで手が迫った時にぴたりと動きを止まった。
(あれ? 俺ってもしかして、いま不味いことしようとしてるんじゃないか?)
「ふぇ? と、遠野先輩、どうしたんですか?」
自分のしようとしていることを冷静に分析したら、セクハラ行為じゃないかと思い始めて俺は動作を止めた。一通り考え終えて、目の前のことに意識を向けると、困惑した桜井の顔があった。どうやらその手を止めた俺の様子に、桜井は戸惑っているようだ。
「ゴホン、桜井。すまないが自分でつけてくれないか?」
「ふぇ? 何でですか?」
(中学生に似つかわしくない胸に、やすやすと触れられるわけないだろ!)
そう、桜井の胸はこの時点でそれなりに大きかったのだ。そうなると、着ける側としても何だかいけないことをしているような気がするのだ。
「勿体ないぜ、師匠! そんなおいしい場面を見過ごすなんて!俺なら絶対……!」
「全くですよ、僕ならそこで……」
「お前ら、頼むから少し黙ってろ」
各々の下心と妄想を包み隠さず、俺は曝露する後輩二人を柔道の締め技で黙らせた。「ギブギブ!」と言って、そのまま肩で息をするような変態二人を一瞥した後、俺は桜井に向き合った。
「お前も女の子なんだから、もう少し、その、なんだ……」
「あの〜、すみませ〜ん」
後ろから不意に声を掛けられたような気がして、俺は後ろを振り向いた。
ふわふわした髪を持ったスレンダーな少女が、にこにこしながらそこに立っていた。
「花飾りくれませんか? さっき貰ったんだけど落っことしちゃって」
「そうか、じゃあ予備の分があるから渡すよ。桜井、これ持っといて」
「は、はい」
手に持っていた花飾りを桜井の手渡し、カゴから新しい花飾りを取り出して手渡した。
「へへん! てーんきゅでーす! じゃ、失礼しまーす!」
花飾り片手にその少女は、俺の前から去って行った。
昨年度を越える波乱とトラブルの種が降りかかる今年度の生活が、今始まったのだ。
(次回へ続く)
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