第17話:ただ自分を超えるために(2)
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いともいえない味と喉越しに俺はしかめ面をした。横目で先輩の横顔をちらっと見たが、彼女は相変わらず海の方を見ていた。
(そういえば、こんな事が昔どこかであった気がする。あれはいつの事だっけ)
その温い炭酸飲料を口にしながら、俺は前世で似たような事があったことをぼんやり思い出した。そうだ、あれは前世の高校時代の時で、当時好きだった女子のクラスメートと少しいい感じになっていた頃だ。その彼女は進路や勉強について愚痴を良く漏らしていたので、何でも理解してやる、助けてやると意気込んでいた俺はこんな感じに口を挟んだっけな。そういうと、そのクラスメートには
「おせっかい! そんな意見、私は聞いてないわよ!」
「もういいわよ、馬鹿!」
と涙を浮かべて罵倒されたものだ。
(何だよ、あの態度は。人が親切心起こして、動いてやったのに)
と、あの時は彼女の言動が分からず、恨みつらみを聞かされた俺は怒るよりも先に呆けたもんだ。今思い返せば、彼女はただ自分の話を聞いてほしかったのかもしれない。そんな中で上から教えてやってます、みたいな態度を取られたら堪ったもんじゃない。いかに自分が人に配慮しきれない幼い人種だったか、と今ではとても反省している。
この目の前で拗ねている先輩も、俺に自分の溜め込んだ何かを聞いてもらいたかっただけなのではなかろうか。普段から自分を抑え続けて苦しんでいた彼女の事だ、きっと相当ストレスや鬱屈した言葉を溜め込んでいたのだろう。
(身体だけデカくなっても、社会に出て働くようになっても女心を理解するスキルというものは前の中学生の頃から相変わらず変わってないな)
俺は再び溜め息をついた。今度は彼女の様子に対してではなく、自分の成長の無さに対して。それは情けなさを代弁するかのように、深く低い音がした。
先輩が拗ねて会話が途切れてからどのくらい経ったのだろうか。
すでに空は、オレンジからネイビーブルーへとほとんど移り終えていた。その空の様子を見た俺は、ベンチに座ってから相当な時間が立っていたことを知った。夕食の時間など、いま何時か気になったので腕時計の針を見るべく腕まくりをしようとした。
すると突然、口のチャックを締めていた先輩が口を開いた。
「ねえ」
「はい?」
呼ばれた気がしたので、俺はその動作を止めて先輩の方を振り向く。その時の先輩は、頬杖を着いて夕日の沈む海を見ていた。きっと何気ない話題なんだろうな、と俺はすっかり気を緩めていた。
「あなたは、自分が何者かって悩んだことはある?」
「え……いきなり何ですか」
「いいから答えて」
せがむような口調で先輩が言ったので、俺は仕方なく思い当たる節を探し始めた。
正直なところ、こ
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