【プロローグ】 滅竜魔導師
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鞘の返り角あたりまで続いていた。
まず取手の先にあったのが付属品のなかでも最も目立っていた弾倉だ。多少短いが、これに至っては拳銃というよりアサルトライフルにでも付いていそうな湾曲した弾倉だった。しかし幅はアサルトライフル用の弾倉にしては太く、連射する類いのものではないはずだ。その先には長方形の部品があり、数々の部品から連想するに排莢口だろう。
もちろんウェンディもシャルルもそんなに細かい知識など持ち合わせていないが、それでも珍しい形状であることに変わりはなく。
「珍しい?」
「……あ! いえ、すいません。じろじろ見ちゃって」
「大丈夫だよ。まぁこれは僕の魔法の説明には関係ないし、良ければ見てみていいよ」
青年は拳銃と一体化した――というには各部品の並びが違うのだが――鞘から刀身を引き抜くとウェンディの目の前に静かに置いた。
一瞬躊躇したが、無言で促す青年にもう一度頭を下げながらウェンディはそれを手に取った。
ずしりと手にかかる、見た目通りの重量感。当たり前だが、刀身なくしてこの重さではウェンディには持って長く走ることもできないだろう。
無知故に引き金にも手がのびるが、しっかり安全装置がなされているため青年が焦ることはない。
しばらく鞘を眺めていたウェンディだが、いかに普段武器に興味を持っているわけではない彼女でもここまでくれば刀身の方にも好奇心がわく。
やはりというか、刀は刀身含め真っ黒だった。否、黒すぎた。
切っ先から刃区まで、鎬筋もなければ刃文もない、影をそのまま刀の形にしたような黒いだけの刀。鞘にならい装飾の類いがなされていない鐔は簡易な楕円で、同じく柄は装飾どころか柄巻や目貫すらなかった。
しかし、機能美とでも言うのだろうか。
刃物を含めた凶器全般に興味どころか恐怖さえ感じているはずのウェンディが熱心に眺めてしまうほど、それらはどんな装飾をまとった宝石より美しく見えた。
「……そろそろいいかな?」
流石に待ちかねたのか、青年が咳払いをする。
それに、ウェンディはようやく自分がそれなりに長い間黒い刀に見入っていたことに気がついて、焦ったように返事をした。
「よし、じゃあ口頭で説明するのは面倒だから簡単に実演するよ」
云うと、なにを思ったのか青年が躊躇いなく自分の腕へとその黒い刀を降り下ろした。
唐突な出来事に制止する暇も、目を背けるひまもなく行われたがためにウェンディとシャルルははっきりと見てしまった。
黒い刀が青年の細い腕とぶつかって"火花を散らす"場面を。
ウェンディは補助の魔法を得意とする魔導師だ。当然肉体強化の魔
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