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黒き刃は妖精と共に
【プロローグ】 滅竜魔導師
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ォードッグたちは動かない。戦意すら失ったのか、唸り声は弱々しい鳴き声にかわっていた。

「行け。二度とこの地へ訪れないと言うなら、僕はもう君たちに興味はない。大人しく、自分の住みかへ帰れ」

 ウォードッグは頭のいいモンスターである。
 とはいえ人語を理解する高い知性は持ち合わせていないはずなのだが、恨めしげに一鳴き。リーダー格らしい他よりいくぶん大柄な体を持った個体先導のもと、ウォードッグは静かに去っていった。
 完全にその姿が消え、今度こそ森に静寂が訪れる。
 ウォードッグを見送った姿 まま動かない人影に、ウェンディはようやく自分がこの男性に助けられたのだと落ち着いて確認することができた。
 幼い彼女には、目の前で起こった出来事はあまりに衝撃的だったのだ。
 死を覚悟しからものの数分の間に、どこからか現れた人影がその驚異をあっさりと排除してしまった。最中思わず補助の魔法で手助けするにはしたが、どうもその後の展開を見るにそれも必須であったとは言えないだろう。
 なにより、死の間際まで戦意を失わないはずのウォードッグにたいし不殺撃退などということやってのけたのだ。
 だからこそ、ウェンディは未だに礼を言い出せないでいた。
 結局最後まで笠と打裂羽織をはずさずにいたので容姿がはっきりせず声がかけづらいというのももちろんあるが、あまりにも自分の常識から外れた人物を前に恐怖しているというの最たる理由だろう。
 こういったとき率先して彼女の代理人として相手を詰問してくれるはずのシャルルも、さすが気が引けてか押し黙っている。
 そうはいっても、いかに得たいの知れない人影であってもこのままさよならと去って行くわけもなし。
 意を決し、礼をのべようとウェンディが口を開いたちょうどそのとき。

「あいつらは頭がいい。一回自分達を脅かす存在がいるとわかった場所にはまず近づかないはずだ」

 遮るように、人影がそんな発言をした。
 先手をとられさらに言い出しづらくなったウェンディを知ってか知らずか、人影はこちらに振り向くと笠へと手を伸ばし、その紐をゆっくり解いた。

「君たち、怪我はない?」

 笠の下から現れた黒髪の青年は、困ったような笑みをうかべウェンディへと手をさしのべた。











「いたっ!」
「おおっと、悪い」

 小さな泉の近くの切り株に腰かけたウェンディの訴えに、黒髪の青年が焦ったようにその手を離した。
 戦場となった場所から歩くこと数分。件の出来事で小さな切り傷やら足をくじいてしまったやらで負傷したウェンディは、青年によって治療を受けていた。
 切り株にはさっきまで着ていた打裂羽織を敷き。清潔な手拭いを、口に含むなどして衛生上問題ないと判断した泉の水でぬらし
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