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黒き刃は妖精と共に
【プロローグ】 滅竜魔導師
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五匹ものウォードッグに食らいつかれてはさすがにたまったものではないらしく人影が身をよじるが、その程度で顎を緩めるウォードッグではない。
 そこ殺到する、控えていた残り十匹。
 少女を助けんと現れた勇敢な人影が食い殺される、刹那。

「天を切り裂く剛腕なる力を――【アームズ】!」

 回転。
 突如としてさらなる剛力を発した人影が両腕を振り子に一回転。噛みついていたウォードッグ達を四方の木々へ振り払い、目前に迫っていた一匹顔面を殴り付けた。
 地を掴む音。
 あと一歩で噛み殺せたはずの人影の急変に、警戒深く距離をとったのはウォードッグ。
 そんな彼らをよそに、人影は自信が発した剛力に驚いたかのように首をかしげ、続いて笠の下から背後の少女を振り返った。

「……! ご、ごめんなさい……。私の魔法、です」

 おどおどとした様子で答えたのは、座り込んだままシャルルを抱き抱えたウェンディだった。
 謝ったのは、笠の下から覗く人影の姿が少々不気味だったからだろうか。それでも、魔力を灯し輝く小さな手のひらは人影へとしっかり向けられている。
 守っていたはずの少々から、突如自身のパラメーターを引き上げるという珍しい援護に、戦闘中であることも忘れ人影は一瞬キョトンと動きを止めていたが、

「……援護、感謝するよ」

 呟き、視線を戻す。
 すでに半数になったウォードッグだったが、その戦意は未だに健在。どうにか人影を排除し、背後の柔らかそうな少女の肉を貪れないかと思案しているようだ。
 手も足も、すべてマントの下に隠したたずむ人影。
 その下は、満身創痍かもしれない。
 援護を受けたとはいえ、事前にあれだけ噛みつかれたのだ。鎧でも着込んでいない限り無傷とはいかない。否、肉が骨に張り付くほど痩せていたとしても外套の下に着込める程度の鎧ではウォードッグの牙は防げないのだが。
 残九匹。
 物量で押しきれると踏んだのだろう、ウォードッグは一斉に人影へと襲いかかった。
 後には引けない、死力の特攻。いままで以上に加速のついたウォードッグたちは人影が反応する前にその喉元に到達した。
 そして――

「…………」

 響く、破裂音。
 時間が止まったようにウォードッグらが空中で急停止。
 次いで、鍔鳴り。
 人影は一歩も動いていないにも関わらず、キンッ、と刃物を鞘に納め音だけが響き、ウォードッグ達が駆けてきた方向とは真逆に吹き飛び、舞っていた木葉がバラバラに切り裂かれ、木々に浅い切り傷が刻まれた。
 静まりかえる場。
 辺りへの影響とは裏腹に、以外にもウォードッグたちはすぐさま起き上がった。体毛に隠れ皮膚には木々と同じく浅い切り傷が刻まれていたが、戦闘に支障をきたすほどではないだろう。
 たたずむ人影に、しかしウ
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