Rainy Heats
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「秋、お前・・・」
「違うでしょ、アオイ?あんた、誰かが帰ってきたらそんな反応するの?」
秋が求めているものがなんとなく理解できた。それは責任でもなく、行動でもない。
「おかえり」
その一言だ。その結果に満足したのか、再び抱き寄せられる。
今度はキスはない、言葉にはキスで返答をするものではない。耳元で答えた。
「ただいま」
?
秋はあの爆発の直後、以前回収に失敗したカプセルが地中に埋まっているのを見つけ、それに乗ったらしい。中の燃料などは廃棄し、非常食もあったのでそれで食いついないでいたらしい。
だが、制御盤が狂っており、地下にも地上にも出れず数日間地中をさまよっていたという。
「爆風で飛ばされてさ、もう死ぬんじゃなかいって思ってた。でも、ビィじゃないけどさ、あんたにまた会いたいって思ったらさ、カプセル見つけたんだ」
「うん」
秋を抱え、ひとまず家に戻ることにした。秋の損傷が酷く、なるべく早く技師に見て貰わなければならない。司令官のツテで『シルム』の修理技師を家に呼んでいるが、どこまで完全に直るかは不明だ。
「カプセルの中でも電源落ちて、再起動しての繰り返しだった。けど、絶対生き延びてやるって思ってた」
「うん」
「そしたらなんかいきなり止まってさ、もう自力で行くしかないかって思って、カプセル壊したらさ、アオイがいるじゃん。もう天国だと思ったよ」
「・・・うん」
「いや、実際もうここ天国なんじゃない?だれも不条理に死なないし戦争もない。アオイも居るし、ビィもいる。私、夢見てるのかな?」
「夢じゃないだろ」
「じゃあもっかいキスしてよー。そしたら夢かどうか分かるじゃん?」
「断る。てかそんな時って普通痛みのほうじゃないのか」
「酷い!・・・あ、でも断られて心が痛いから、やっぱり現実なんだ」
「悪いけど、これが現実だよ」
「アオイのいじわるー。・・・でもさ、何かこの辺り石像多いけど、そんな芸術性の高いとこなのここ?夢の世界じゃなくてホントに現実?」
「いや・・・ここ現実だけど・・・それは」
秋の質問には返答しづらい。作成している石像はどれも少女姿だが、顔に至っているのは視界に入る範囲では存在しない事が救いだ。まさか、秋の石像を彫っているとは言えない。
どうしたものかと返答に困っていると、横から助け舟が出された。
「それは、貴女の修理が終わったらお話しますよ」
聞こえた柔和な、だが甘美すぎる声に背筋の毛が逆立ち、振り向かざるを得なかった。
「あんた・・・もしかして」
『教団のトップだ!』
そこに現れたのは、今の教団のトップ、その人だった。直で見たことはなかったが、写真では見たことがある。
「どうも、英雄のご一行」
言葉全てに悪意は感じないものの、底が見えないどろりとした粘着質な感触がまとわりつく。
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