Rainy Heats
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「は!?」
『そいでこれが最後に撮った・・・今の姿。バージョンさん』
対比するように、先ほどの姿の横に今の姿が並べられる。今の姿は、最後に雨蜘蛛に乗った時の写真で、自分と秋のツーショットの様になっていた。いつの間に撮ったんだ。
「いや、別人だろ・・・これ」
『だよねー』
並べてわかるが、顔のパーツも何も全てが全く別物だ。これを同一人物とはとてもではないが言えない。
『秋ちゃんってさ、この姿になる時に全部のパーツとっかえたんだよね。そこまでしなくてもいいと思ったんだけど』
「そうか・・・」
二人の秋、両者とも秋であることに変わりはないが、容姿はまるで別人という不思議な状態だ。
『で、アオイちゃんはどっちが好み?やっぱり大き方?それともちっちゃい方?』
「・・・秋は、秋だろ」
『お?それって、遠回しなプロポーズ?いやん妬けちゃう!』
「生きて、くれてたらね」
『そう・・・だね』
ビィの言葉も、アオイの言葉もふわふわと宙を漂い霧散した。秋が居れば、この言葉も宙に浮かずに済む。だが、それは叶わないかもしれない。
こんな気持になるのならば、いっそ秋のそばに居続けてやるべきだったと少し考えもする。
今の心には秋が居ない虚無感しかなかった。
「行くか」
『うん・・・』
秋の石像は今も着々と完成してゆく。だが、数年もすれば地下は放棄され、再び人は地上へと上がり、十数年もすれば秋の事も忘れてしまうだろう。それまでの、偶像だ。
彫られた秋の顔はなんとも言いがたい悲しそうな表情をしていたが、このような顔をしたことはない。いや、するはずがない。秋はもっと―――――。
『危ない!』
ビィが叫ぶのと同時のことだった。見上げていた秋の石像が、ゆっくりと傾き始め、倒れはじめる。石像はかなり大きく、5メートルほど。下に人がいれば間違いなく潰されてしまうだろう。
ビィの声に反応し、作業をしていた者達は何事が起きたのか振り返りながら、蜘蛛の子を散らすようにその場を離れた。
避難が完了するのと掃除に、ゆっくりと石像は倒れ、原型がわからなくなるまで粉々に砕けた。
「いったい、何が・・・」
風に煽られ建造物は倒れたりする場合があるが、ここは地下のためその可能性はない。地震かとも思ったが、自分たちは全く揺れては居ない。ならば、何が。
その原因は、石像の真下にあった。否、その原因は上がって来た。
それは人より少し大きいほどの、白い箱。それが、蝉の幼虫が上がってきたように土を押し上げて出てきた。
「これは・・・」
『輸送用のカプセルじゃん!』
地中から上がってきたのは、地上へ物資を輸送するために使っていたカプセルだった。
だが、今になってなぜ。ここは地下で、輸送するものもないはずだ。
その間もゆっくりとカプセルは上昇し、完全にカプセルは地面か
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