第2章 秘密の恋人
2-1 恋人同士
恋人同士
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決めをした覚えはない」
「こうなったら、」康男がムキになった。「俺、本気でマユミちゃんに告白してやる」
「おお、おまえもその気になったか」拓志が面白そうに言った。「しろしろ、告白」
「ムダだよ」ケンジが言った。
「は?」
「残念だが、マユにはもう彼氏がいるんだ」
「何だと?」
「おまえ、こないだそんな事一言も言わなかったじゃないか。マユミちゃんにそんなのがいるなんて」
「そうだそうだ」
「って事は、マユミちゃんに彼氏ができたのも、つい最近……って事か?」
「ま、そんなとこだな」
「おまえら兄妹、同時期に恋人をゲットした、ってか」
「そ、そういう事にしとけ」ケンジが少し焦ったように言った。
「何が『そういう事』だ」康男が心底面白くなさそうにほおづえをついた。
その時、コーチがドアを開けて入ってきた。
部員たちは背中を伸ばした。
「突然だが、」
コーチは部員たちの前に立つと、いきなり口を開いた。
「うちの部活にカナダから留学生がやってくる」
集まった部員たちの中にざわめきが広がった。
「男子部員には残念だが、ケネス・シンプソンという男だ」
「セクハラ発言」後ろの方に座った女子部員の一人が隣に座ったマネージャの友人に声を潜めて言った。
「楽しみじゃん」そのマネージャはにこにこしながら応えた。「イケメンだったら食べちゃおかな」
「現在高校二年。彼は中学の時、カナダの水泳の全国大会で三位に入賞したという凄いやつだ。得意種目はバタフライ」
コーチはそう言って、ケンジに目を向けた。「海棠、いい刺激になるぞ」
ケンジは軽く肩をすくめた。
「しばらくは学校の学生寮に寝泊まりするが、帰国する三日前からホームステイする予定だ。部員の家に」
「誰んちですか?」康男がさっと手を挙げて言った。
「まだ未定だ。本人が来て、うちの部活に馴染んだら決める」
また康男が手を挙げた。「俺、英語話せません」
部員の間にまたざわめきが広がった。口々に、「俺も」「あたしも」と言い合っている。
「ああ、それは心配いらん。彼は普通に日本語を話す。ちょっと癖はあるがな」
「カナダから来るのに、日本語を話すって……」拓志が横のケンジに小声で言った。
「ま、いいじゃないか。無駄な気を遣わなくて済むって事だし」
拓志は眉間にしわを寄せてケンジを見た。
「おまえ、今日はほんとに楽観的だな、いつもと違って……」
その日の晩、入浴を済ませたケンジは、約束通りマユミの部屋を訪ねた。
「マユ……」恥じらいながら顔を赤くして、後ろ手にドアを閉めたケンジは、ベッドに座ったマユミに近づいた。そして手に持っていたチョコレートの箱を差し出した。
「ケン兄」マユミはにっこりと笑った。「コーヒー淹れてくるね
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