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東方虚空伝
第三章   [ 花 鳥 風 月 ]
四十八話 小さな豪鬼
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げな視線を送るが萃香はその視線など気にも留めず笑みを浮かべながら、

「ハハハハッ!あんたは確かに性悪だけど――――認めたげるよ、あんたは強い」

「……ありがとう、と言っておくわ。それで認めたから何?大人しく捕まってもえらえるのかしら?」

「……あぁいいよ、但し――――次の一撃に耐えられたらねッ!!」

 萃香はそう叫ぶと右腕を天へと翳す――――するとその掌の先に次々と岩石や樹木、果ては紫が撃ち出した武器等が集約されていく。
 寄せ集められた物体は三十mを超す巨大な塊と化すが次の瞬間には急激に面積を減らし十五p程の球体へと変わった。
 そしてその球体から突如凄まじい熱量が放出されあたり一帯が瞬時に焼き払われた。結界内に残ったのは炭へと変わった木々と大地だけ。
 危険を察知し咄嗟に自分に結界を張った紫だがその熱量は結界越しに紫の衣服や体を容赦無く焼き付けていた。
 物質は密度が高まると熱量を生む。物質同士が結合する際に生まれる“結合エネルギー”そしてそれから外側へと吹き出す反応熱、簡単な例えなら太陽だろう。
 萃香は物質を萃め凝縮し更に密度を高める事で疑似的な太陽を生み出したのだ。その熱量は天照の太陽と遜色無い程ではあるのだがあまりの強烈さに創り出した萃香自身にもその牙を向けていた。
 能力で熱を散らしてはいるのだがそれでも有り余るほどの暴威が荒れ狂う。しかしそんな暴威の中、萃香は笑みを浮かべて紫に宣誓する。

「さぁいくよッ!!これで最後だッ!!」

 萃香の言葉に紫は負けじと笑い返し、

「いいわッ!来なさいッ!」

 紫の言葉を受け萃香は紫目掛けて暴虐の太陽を投げつける。
 空気すらも焼き払う勢いで紫へと迫る太陽はその眼前で動きを止めた。紫が空間の境界を操り進行を妨げたのだ。
 ――――だが次の瞬間、妨げられていた太陽の周囲の空間が歪み始める。物体の密度が高い、という事は比例して重量が高い事でもある。
 そして高すぎる重量は時として空間をも捻じ曲げ深い穴へと変わる――――俗に“ブラックホール”と呼ばれるものに。
 萃香の創り出した太陽はブラックホールになるほどの重量は無いがそれでも空間を歪ませる程のエネルギーと重量を持っており紫が遮断した空間の壁が砕けるのも時間の問題であった。
 だが紫は逃げようともせず空間越しに太陽に向け左手を翳している。
 そして空間が音も無く砕け暴威の熱が紫に襲い掛かる――――と思われた時、太陽から一気に熱量が消え失せ唯の球体へと戻り砕け散った。
 紫は太陽を防ぐ為に空間結界を張ったのではなく熱反応の境界へと干渉し無力化する為に時間を稼ぐ意味で結界を張ったのだった。
 もっとも失敗すれば蒸発していただろうが。スキマを使う、という手も思いついたのだが相手から逃げるようで
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