第二部
第二章 〜対連合軍〜
九十八 〜虎牢関〜
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のでしょうか?」
「良い。あまり洛陽を離れては、皆に叱られよう」
関と名はつくが、無論箱根や不破の関とは比較にならぬ。
単なる通行の監視ではない、それ自体が巨大な要塞なのだ。
嘗て、破竹の勢いで都に迫った劉邦が、虎牢関を見て絶望感に囚われたという話も聞く。
朱里ではないが、これを攻めるだけでも頭を悩ます事甚だしいであろうな。
「閃嘩」
「はっ」
「此度、お前は前線には出さぬつもりだ。不満はあろうが、良いな?」
「……はい。我が使命は月様の守護、武人の誉れを捨てるつもりはありませんが。そこは弁えているつもりです」
「うむ。無論、私とて月に手出しをさせるつもりは毛頭ないが。お前がついていれば、毛ほどの懸念も要らぬ」
大きく頷く閃嘩。
確かに、閃嘩は大きく変わった。
己の武勇を誇り、猪突猛進するばかりであった頃が信じられぬ程に。
「既に話した通り、私の知る歴史では……お前は死ぬ事になる」
「…………」
「此所ではない、この先のシ水関で。連合軍に加わっていた、関羽の働きによって」
「……歳三様。私は、いえ、その歴史での華雄は……弱かったのでしょうか?」
「さて、私も実際に見聞きした訳ではない。だから、あくまでも後世の評価……或いは創作なのやも知れぬな」
「…………」
唇を噛み締める閃嘩。
自身の事ではないとは申せ、屈辱を感じているのであろう。
「閃嘩。お前は、自分を弱いと思うのか?」
「……わかりません。以前ならば、私に勝る武人などそうそういないと断言していたでしょうが」
閃嘩は、頭を振った。
「そうか。だが、それで良いのではないか?」
「……そう、でしょうか?」
「うむ。己が弱いと思えばこそ、鍛錬に励むしかあるまい。それに、死なぬよう足掻く事にもなる」
「……は」
「己を過信するな。勝てぬ喧嘩はせぬ、それは恥ではないぞ」
私の言葉に、閃嘩は苦笑する。
「割り切っておいでですな、歳三様は」
「そうだ。そうする事で私は生き延び、戦い抜いてきたのだ。朱里」
「はわわ、な、なんでしょう?」
不意に話を振ると、黙って聞いていた朱里は慌てふためいた。
「極論やも知れぬが、突き詰めて言えば軍師のすべき事もそれに尽きるのではないか?」
「そ、そうかも知れません……。勝ち目のない勝負をひっくり返す事もありますが、一番は負けない戦いをする環境を作る事ですから」
「この戦が、まさしくそれに当たる。連合軍は勝たねばならぬが、我らは負けられぬ」
「…………」
「…………」
二人は黙って私を見ている。
「幸い、地の利は我らにある。挟撃される懸念もなくなったのだ、これを活かせば負けなどあり得ぬ」
「はい。後は、糧秣次第にはなりますが……」
朱里の顔が曇る。
やはり、最大の懸念事
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