第二部
第二章 〜対連合軍〜
九十八 〜虎牢関〜
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む、なかなかに食べ辛いものだな。
それでも何とか噛み、口に含む。
汁気たっぷりの餡と、それを包む生地の食感が広がった。
「……美味しい?」
「うむ。なかなかのものだ」
清国人が横浜で出していたものと比べて、どうであろうか。
残念ながら、元の世界ではそれを味わう事がなかったからわからぬが。
そんな事を思いながら、大ぶりの饅頭を全て腹に収めた。
……と。
また、新たな饅頭が目前に差し出されていた。
「鈴々。何の真似だ?」
「恋ばっかりずるいのだ。鈴々も、お兄ちゃんが好きなのだ」
屈託なく言う鈴々。
恐らく、異性としてではなく家族としての……であろうな。
「気持ちはありがたくいただこう。だが、そこまで私は空腹ではないのだ」
「むー。不公平なのだ」
むくれる鈴々。
……仕方あるまい、一つが二つになったところで変わるまい。
水を一口飲んでから、口を開ける。
「わーい、流石お兄ちゃんなのだ♪」
再び、饅頭が口に押し込まれる。
全く、私は甘いのであろうか。
「な、何をしておられるのですかご主人様!」
「ぐっ!」
突如として大声を上げられ、饅頭が喉に詰まる。
「み、水を……」
「お姿が見えないと思ったら、このような場所で油を売るなど!」
怒り心頭の愛紗。
その間に、どうにかつかえた饅頭が喉を通った。
「あ、愛紗。何をそのようにいきり立っておる?」
「ほう。おわかりにならぬと……宜しい、じっくりと教えて差し上げましょう!」
その後、一刻ほど愛紗の説教は続いた。
申し開きを一切聞かぬのではどうにもならぬ。
数日後。
華佗の診察を受け、暫くは無理な運動や戦闘をせぬ……という条件での完全な床上げをした。
となれば、是非とも見ておきたい場所がある。
「済まぬな、忙しい最中に」
「い、いえ。ご主人様こそ、本当に大丈夫なのですか?」
「そうでなくとも、歳三様は無理をなさるのです。くれぐれも、華佗の言葉に背かぬよう願います」
心配顔の朱里と閃嘩。
連合軍が攻め寄せるまで、猶予は幾ばくもあるまい。
だが、戦場となるべき場所はこの眼で確かめておきたい。
「朱里。洛陽に至る道は、東方よりはこの道以外にないのだな?」
「はい。一人二人ならばともかく、軍が動ける街道は此所だけです」
「なるほど。では、どうあっても此所を抜くしかないという事か」
「そうです。……私が攻める側なら、思案に明け暮れている頃だったでしょう」
我々の目の前に聳え立つ、巨大な壁。
洛陽の最終防衛線にして、難攻不落の要塞。
「これが、虎牢関……か」
「何度見ても壮観そのものです」
閃嘩が、感に堪えないように呟く。
「あの、ご主人様。シ水関はご覧にならなくていい
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