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木ノ葉の里の大食い少女
第一部
第二章 呪印という花を君に捧ぐ。
化け物
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え絶えだった。

 +

「とらないで。私の子供を返して――!」

 一人の女がそう叫んだ。
 その子の父が死んだ日に。その子が乳離れをして間もないころに。
 そしてもう一人の女もまた、泣き叫んだ。
 その子の父が死んだ日に。その子が生まれて間もないころに。

「貴方たちは狂ってる――私の、私の子供を返してよ!」

 しかしその女のどちらも、冷たく突き放されてしまうのだった。

 +

 ぐう、と空気をぶち壊す腹の音。一瞬砂の動きが止まった、かと思いきや、また猛スピードでそれは再開した。
 いい加減、苛々してきていた。第三の試験予選が始まってから何も食べていないし、第二試験ではろくなものを食べていなかった上に、塔に来ても野菜と水と硬い肉にがちがちのパンというメニューばかり。それで狐者異の腹が膨れるわけはない。そして腹が減ると苛々するというのは誰でもあることで、狐者異の場合、それが特に顕著だった。
 
「あーもー苛々するッ! なんつーか、あれだな? 所謂“化け物並みの強さ”って奴だな? そういう比喩はあんま信用してねえんだけど、なッ」

 クナイにつけられた起爆札が爆発して砂を撒き散らし、その間を手裏剣が通っていく。しかし砂はそれすらも阻み、受け付けない。マナはチッ、と舌を打った。彼女自身が狐者異の名を持つ化け物の一族の末裔だ。人間の血と長い間交わって随分と薄められているとはいえ化け物は化け物で、体質上やチャクラの性質なども普通の忍者とは大幅な差異がある。けれど体術スキルはなく、幻術耐性もゼロに等しく、チャクラ性質の所為で普通の忍術すら使えずのマナは、化け物とは言え“化け物並みの強さ”という比喩があまり似合わなかった。

「――化け物、か。正に的を射ている、というべきだろうな」

 鋭い眼光がマナを貫いた。

「俺は母と呼ぶべき女の命を奪い生れ落ちた。最強の忍びとなるべく、父親の忍術で砂の化身をこの身に取り付かせてな……」

 静かに、静かに彼は言った。

「俺は生まれながらの化け物だ」

 生まれながらの化け物。
 ――でも、お前は普通の忍術が使えるんだろ?
 心の中で思ったそれは、知らず知らずのうちに言葉になって口をついて出てきていた。我愛羅が眉をひそめる。

「お前は最強の忍びになるべくして生まれたんだろ? つまり、最強の化け物になるんじゃなくて、最強の忍びになるんだろ?」
「……何が言いたい?」

 ――アタシはばけもの
 思いながら、マナは笑った。笑いながら、言った。

「ならおめでとさん。お前は化け物じゃねえよ」

 瞬間一本のクナイが、我愛羅の砂すら反応できないようなスピードで我愛羅の左頬をかすり、壁に突き刺さった。飛び散った返り血が、直ぐそこまで迫ってき
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