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【短編集】現実だってファンタジー
俺馴? 外伝2ー1 [R-15?]
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変したいりこ。それは前とは違う異常なのだろうか。それとも俺が思い出せないでいるだけで、本当はこれが正しいのだろうか。どこかで何かが途切れているかのような感覚。
その中でも、俺はこの女に対して疑いと不信感を拭いきれないでいる。

――果たしてこいつは本当にいりこなのか?

俺がいりこをいりこという個体として知覚している理由は、五感によって感じ取られる彼女の特徴を総合して経験則から導き出しているのだ。彼女の外見が記憶と同じで声が同じならば、例え中身が違っても俺は最初それをいりこだと知覚するだろう。
ならばもしも今のいりこが双子の姉か妹と入れ替わっていたとしたら、どうだろう。いまのいりこは俺の知るいりこと違い過ぎる。

さっき、馴れ馴れしくも絡んでくるその手を鬱陶しく思って、思い切り手を握りしめた。俺の知る彼女ならば「痛い」と抗議したはずだ。だが彼女は心底嬉しそうに、満たされているとでも言うように笑っていた。その笑顔が、目が、俺の記憶にあるいりこのそれと違うようで、でも本当に違うのかがはっきりとしない。

その笑顔は余りにも異端で、理解が追い付かない。理解することが恐ろしく感じるほどに屈託のない、それが不自然であることを微塵も感じさせない笑み。彼女の元の人格からは考えられないものだった。
或いは、考え難いがクローン人間。双子もそうだが、遺伝子レベルで差異がなくて、長い付き合いもないのでは、すり替わってもそれを知る術など俺にはないだろう。それとも、このいりここそが彼女の本性だとでもいうのか。或いは、彼女の精神は何らかの原因で変調をきたしているのか。――いや、そんなことがそもそも起こりうるのかという疑問も湧いてくる。

よもや、おかしいのは俺なのか。その事故とやらに遭った俺は精神もしくは記憶に変調をきたし、ありもしない世界を心の中に作り出しているとでも言うのか。俺には家族など最初からいなくて、俺を蠱惑的(こわくてき)な目で見つめるいりこは、前からずっとこうだったというのか。ともすれば、本当にいりこがそんな目でこちらを見ているのかすら怪しいとさえ考えてしまう。
俺があやふやになっているのは記憶だけではないというのか。昔、事故で頭を強く打ったせいで通常の人間と違う世界の認識を抱くという物語を見たことがある。それと薬と、関係があるのか?


不意に、視界に悪友の達田(たつだ)が歩いているのを見つけた。
同級生で、俺以上に不真面目で、いつも下らない事ばかり言ってけらけら笑っているくせに悪知恵は働く。そんな合永触れた悪餓鬼で、だからこそ友達だ。その男が、日常と同じように歩いている。俺の知っている記憶の中での日常と相違なく。

朝起きてから、いりこ以外で初めて俺に近しいと言える人間を発見したことに、不思議と安心感を覚える。冷えていた末端の血
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