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【短編集】現実だってファンタジー
俺馴? 外伝2ー1 [R-15?]
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ら見ずに正面を向いて、硬い表情をしていた。さざめくんは優しいから、迷惑になると思って遠慮しちゃったんだろう。

「――今日は、変だ」
「何が変なの?」
「……とにかく、変だ」
「さざめくんもちょっと変だよ?でも、そんなさざめくんもあんまり見れないよね」
「………」

黙ってしまった。怒らせてしまったろうかと急激に不安になるが、手を握ればそうでないことが直ぐに分かった。さざめくんは、いつだって体に嘘をつけない。こうして肌と肌を合わせれば直ぐに分かっちゃうから。

こうしているとさざめくんの汗の感触、肌の感触、体温、指紋を感じ、共有している気がする。普通の握手では満足できない、最低でもこれくらいは密着しないとさざめくんを感じられない。本当なら抱きしめて、心音をたしかめて、血管の脈動を感じて、吐息まで全部感じるほどに絡み合いたいけれど……それは今は駄目。

そう、今は駄目。皆に見せつけてさざめくんの隣にいるべきなのが誰かを知らせて、自慢したくもある。きっと堪らなく恥ずかしくて、でも堪らなくうれしい気分になれる。もうさざめくんが他の人達と話をしなくなるくらい濃密にすれば、変な虫も二度と寄って来なくなる。

でも、それをやると私に変な虫が寄ってくるかもしれない。私の身体を自由にしていいのも、心を縛り付けて良いのも、さざめくんだけなのに。駄目だよそんなの。2人きりの世界が本当はいいの。あれもこれも魅力的だけど、一番はいつだって変わらない。

――さざめくんは奥手で照れ屋だから、私がリードしてあげるの。朝も昼も、夜だってずっと。ずうっとずうっと、一緒だよ。好きだって言ってもさざめくんは意地悪だから、きっと素直に答えてくれないよね。でも私は分かってるよ。

いつだって、わかってるもん。

何も言わなくても嘘をついても、私にはわかってるの。



 = =



学校に着くまで、さざめは結局本心をいりこに何も言うことが出来なかった。
あの薬が何の薬で、俺は何の事故に遭った所為でそれを服用しているのか。家族のことだって俺の家にいた理由だって聞きたい。聞きたいが、俺には頭のどこかでそれに覚えがあるような気がする。ならば聞かなくともいい。

いい、筈なのだが――何故俺はそんな曖昧な感覚に恐怖を覚えているのだろう。

家を出てからも異常は続いている。父と母の靴がない。車も無い。そして、隣のいりこの家は空き家になっている。そこにいりことその両親が住んでいた筈の家は、まるで何年も放置されたように汚れている。時間の感覚さえおかしくなってしまいそうだった。自分が15歳ではなくなっているんじゃないかとさえ考えた。

――だが、段々とそれが間違いかどうかが頭の中で曖昧になる。父と母のいない我が家。その痕跡さえ消された我が家。豹
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