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【短編集】現実だってファンタジー
俺馴? 外伝2ー1 [R-15?]
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でしょ?忘れちゃったの?」
「後遺……症?」
「そうだよ。さざめくんの心を安定させる薬。ずっと飲んでたでしょ?」

知らない。事故など知らないし覚えがない。怪しげな薬を飲ませようとするな。そう言おうとした俺の顔を、いりこが見つめる。

「飲んでたよね?うん、飲んでたよ」
「いや――」
「違うの?全然、覚えがない?」

何の事だ、と言いかけたところで、俺はうすぼんやりとした既視感のようなものを覚えた。そうだ、俺は、この薬を知っている――気がする。もやがかかってハッキリしないが、このやり取りも何度かしたような気がする。いりこが幼馴染ではないと思っていた主な理由は、俺が思い出せなかったから。ならば、俺が思い出せるという事は……俺の経験していないことなど記憶にある筈が無いのだから、これは真実、か。

「……いや、粉薬は苦手なんだ」
「そぉ?錠剤の方が飲みこみにくい気がするけど」

手渡された袋を見つめる。何所で貰った何の効用がある薬なのか知りたい不安に駆られるが、俺は「これは必要な薬だ」と言い聞かせるようにそれを呑み込み、水で押し流した。

――この不安は、言い様の無い不安は何だ?

薬を飲みこんだときに、いりこの顔が微笑んだように見えたのは、目の錯覚か?



 = =



隣のさざめくんが落ち着きなく歩いている。
ポーカーフェイスだけど、指の動きとか匂いでさざめくんの事は大体分かっちゃう。いまのさざめくんはどこか緊張していて、落ち着かないみたいだ。鞄を握る手にもちょっと力が籠っている。

緊張しているさざめくんもかわいい。だってこんなに強がってるのに本当は不安でいっぱいなんて、守ってあげたくなっちゃうもの。もう少しそんなさざめくんを見ていたいけど、可愛いからって意地悪はいけないよね。
さざめくんが困っているなら、それを助けるのは私の役目なんだ。私はさざめくんの幼馴染だもん。意地っ張りで本音を隠しちゃうさざめくんを助けてあげられるのか彼の友達でも家族でもない、私だけだから。

「ねえ」
「なんだ」

そっけない振りをしているさざめくんの左のてのひらに、私の右手を滑り込ませる。指と指の間に私の指をすべり込ませて、戸惑う様に硬直するその掌を優しく包んだ。恋人繋ぎというやつだ。ちょっと大胆かな、とも思うけれど、これが一番好きだ。一瞬硬直したさざめくんの指はその場を逃れようと少しもがくが、逃げられない事を悟ると一転して強く握り返してきた。

指の血管が圧迫されて紫色になる位に強い締め付けだ。なんだかさざめくんが私を必死に求めているみたいでちょっと微笑ましくなって笑った。そしたら、照れ臭くなったのか指の力は弱まった。もう少しだけ握っていて欲しかったな、と思ってさざめくんの顔を見る。こっちを横目です
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