俺馴? 外伝2ー1 [R-15?]
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や間をおいて部屋に着た声の主が誰かを把握して、その後困惑の表情を浮かべる。何故ならばその相手は自分の目の前にいる筈のない人物だったからだ。
「……い、いりこ?お前なんでウチにいるんだよ?」
田楽入子。彼の隣の家に住む、さざめにとっては謎多き乙女である。
彼女は昔から隣の家に住み、学校でも常に一緒なくらいの付き合いがある幼馴染、だと周囲は言う。だがさざめの記憶にはそんな女の子は存在していない。家族までもが彼女の事を知っているのにさざめだけがその事実を確認できずにいるのだ。彼女自身はまるで幼馴染であるかのような言動を取るが、それが嘘か真かは彼女の存在を知覚してから数か月たっても未だに分かっていない。
そんないりこだが、さざめの経験則で言うと彼女がこの早朝に家に乗り込んできたことなど一度も無かった。決まって彼女は家の玄関である摩り硝子の引き戸の向こうに立っていて、さざめが顔を見せるといつでも癖のある快活な声で朝の挨拶をぶつけてくる。
決してどこぞのラブコメにあるように家の中まで上がり込んで起こしに来るなどという現実的に考えづらい行動を取るほど他人の迷惑を弁えない人間ではない筈だ。ふざける事はあるが、度を過ぎないようにという心遣いは出来る人間だと思っていただけに、このような事態を予想だにしていなかったさざめは面食らっていた。
しかも、服装を見てみるといつもの制服の上から可愛らしいフリルの付いたエプロンを装備し、何故かその手にはおたままで握られている。金属表面が微かに濡れていることから、使用後に一度洗ってわざわざここまで持ってきたのだろう。そのような事をしてまで何故お玉を握ることに執着したのかは彼には理解できなかった。
さざめの混乱はさらに深まる。彼女の方もまるでこれが日常であるかのように屈託のない笑みを浮かべているためにどう言葉をぶつければ分からない。そんな動揺を知ってか知らずか、いりこはさざめの手を勢いよく掴んで引っ張った。
「もう、寝ぼけてないでご飯だよぅ!早く歯磨きして顔を洗って来るの!時間にもそんなに余裕ないんだから!」
「うわっ!わ、分かったから引っ張るな馬鹿たれ!」
確かに、時計を盗み見るとそれほど時間に余裕はない。余裕がある様に早起きすれば良いと思うかもしれないが、自分の欲望に忠実なさざめは人より少し遅くまで寝る方を選んでいた。結局その違和感や異変に対してきちんと問いただす暇もないまま、彼は部屋の外に引きずり出された。仕方なく俺はいりこに従って洗面台へと足を運ぶ。
「……ふふっ♪」
「?」
不意に笑い声が聞こえて後ろを振り向くと、いりこが俺の部屋を見つめながら下腹部を緩やかに撫でていた。その行動に何の意味があるのかは理解できなかった。
= =
――いったい何だという
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