暁 〜小説投稿サイト〜
FAIRY TAIL 星と影と……(凍結)
悪魔の島編
EP.19 S級クエスト解決
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てた『強くなる』という誓いをワタルに宣言するつもりだったエルザ。だが、己の精神を侵していた月の雫(ムーンドリップ)の膜が取り払われたせいか、快活な笑みを浮かべている彼の顔を見て、それは取りやめた。

「(ワタルは優しい。きっと私の事を重荷ではないと言うだろう)」

 そう言われてしまえばきっと自分の脆い心は彼に甘える方に傾いてしまう。それでは駄目なのだ。他の誰でもない、自分に胸を張って彼の隣を歩くために強くなると誓ったのだから。

 エルザはそう考えると、仲間たちの方へ歩いて行った。




 その後ろ姿を見ながら、ワタルは彼女の事を想う。

「(きっと、エルザの中で何かが変わったんだ)」

 そう思ったのは、乱れた精神での荒れた思考ではなく、あの邪気の膜が晴れた後の、普段の思考力を取り戻した余裕が出てきた頭での考えだ。
 落とし穴での一件の後から、エルザを見てそう感じたワタルだが、彼女のその変化を悪い物とは思えなかった。それがなぜかは分からない。洞察力には自信があるワタルだが、彼女に関しては分からない事の方が多かった。
 それでも、自分の勘が良い変化だと言っているのだ。ワタルはそれを信じる事にした。

「(エルザと言えば……)やっぱそうなのかね、俺は――」

 スッキリした思考だからこそ、落とし穴の中での自分の行動を振り返れば、それは自ずと自覚できた。


 状況に流され、衝動に突き動かされての行動だったが……あれは確かに自分の感情での行動であり、彼女を、エルザを愛しく思ったのは偽りのない自分の感情だった、と。


 だが、それが受け入れていい感情なのか、或いは否定すべきなのでは……そう迷う自分もいるのだ。ウジウジと悩むのは自分らしくないと分かってはいる。
 だが、これは簡単に出していい答えでも、簡単に出したい答えでもないのだ。

「――――俺は」

 どうすればいいんだ。

 騒ぐ村人や仲間たちを見ながら、ワタルはモヤモヤを消す術を知らず、一人呟くのだった。


    =  =  =


「デリオラの件は残念だったわ」
「まあ、仕方ねえさ。流石に死んでるんじゃな」

 魔法評議会会場・ERA(エラ)の図書館で、長い黒髪に着物で四肢を包んだ美女、ウルティアが口を開く。それは独り言でも何でもなく、彼女からは見えないが椅子に座った男が答えた。

「デリオラが手に入れば、また一歩理想(ゆめ)に近付けると思ったんだが」

 言葉とは裏腹に、少しも残念そうではなく、むしろ整った顔に笑みすら浮かべるその男はジークレイン。彼は読んでいた書物を閉じ、立ち上がってそれに手を置くと、その本はひとりでに浮き、元の場所に納まった。
 上質で硬い床に足音を響かせ、艶を持つ長い黒髪
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