第4幕 権兵衛隊長始末記
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られましたな」
「……そうね。なしくずしに、だけど」
夏侯淵の言葉に、嘆息しながら頷く曹操。
少しも鮮やかな手並みではない。
驚くほどの鎮圧能力でもない。
しかし、事件は避けられ、互いが笑いあい、事件の当事者たちすら肩を並べ、互いに酒を飲みくらべている。
その民の笑い合う中心にこそ、ゴンベエはいた。
「あっ、夏侯淵様に……曹操様!? お、お疲れ様です!」
と、二人のいるすぐ傍の裏道から、一人の兵が声をかけてくる。
「むっ……? お主はゴンベエの隊の者か」
「あ、はい。ゴンベエ隊長の命で、周辺の家々に説明に回っていました」
「説明……?」
夏侯淵の言葉に、その兵が説明する。
曰く、喧嘩を治めるために宴会に持ち込む故、その騒ぎを大目に見るように近隣に頼み込みにまわっていたらしい。
「あの男……最初からこうするつもりだったと?」
「はい。隊長は酒の喧嘩は酒で決着を着けるのが一番だと。他にも酒家の周囲は一番治安の悪化が懸念される場所ですので、近隣の家屋には毎日顔を見せています。ここ以外の酒家や治安が悪い場所周辺には、私と同じように外の兵も回っています」
「そんなことをしていたのか……だから酒を毎日のように持って行っていたと?」
「あ、はい。隊長の指示で、人相が悪そうな連中とは酒を飲み交わしてつなぎをとっています。そういう連中は裏での顔も効きますから、飯をおごったり、酒を飲み交わしたりすることで、こちらに協力するように頼んでいます」
「………………」
「面倒事が起きた時には、まっさきに隊長が飛んでいって話をつけています。隊長はそういう連中と打ち解けるのがすごく上手いんですよ。気前もいいから、連中も結構協力的ですしね」
もともと間者働きが得意なゴンベエである。
疑われずに敵地に入り込むには、人当たりがよく気前がいいことが第一だった。
その根底には、長年の上司である羽柴秀吉の『人たらし』を、最も間近で見てきた経験の裏打ちによるものでもある。
「……やるじゃない」
思わず呟く曹操。
それを聞きつけ、夏侯淵と兵が振り返った時、確かに曹操は微笑んでいた――
のであるが。
実は、これには後日談がある。
「………………………………で?」
陳留、王座の間。
そこにドデンとふんぞり返って溜息をつく人物。
顔を歪め、冷めた目で見下ろすその姿は…………なんというか、ふてくされているようにも見えた。
そして――
「……………………この通しっ!」
その王座の前で、平身低頭に頭を下げて土下座する男が一人。
誰が誰であることなどもはやお分かりだろう――曹操とゴンベエであった。
「もう一度
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