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センゴク恋姫記
第4幕 権兵衛隊長始末記
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たことに、思わず目を剥く曹操。

(あの男……この街にきてまだ一月も経たないのに、すでに名前が知られているですって?)

 警備隊の隊長にしてからでも半月経つかどうかである。
 それがこんな場末の酒家の主人や客にまで、その名前が知られているとは…… 

「ちっ……旦那、止めないでくだせえ! ヤロウ、俺に飲ます酒なんかねぇってほざいたんですぜ!」
「ああん!? てめえがオレッちの出す酒がまずいと言ったんだろうが!」

 そうした曹操の内心をよそに、騒動は続いていた。
 酒場の主人とその客は、ゴンベエを間に挟んで互いに罵倒しだしたのである。
 だが――

「やめえやめえ! 酒の文句は酒に言え! 酒はお天道(てんと)さんが味を決めるんじゃ! その酒がまずいっちゅうことは、お天道さんがお主に文句があるんじゃろうて!」
「なっ……」
「主人! その酒に人の血を吸わせれば、それは天の神さんに生き血を飲ませる同じものぞ。そんなもんを飲まされた神さんは、当然激怒するじゃろう。お主は天の神さんの怒りを買いたいんか?」
「い、いや、そんなつもりは……」

 互いに逡巡する二人に、ゴンベエはその場にあぐらをかいて座りこむ。
 そして腰に下げていた酒壺をどんっ、と置いた。

「ならば酒の喧嘩は、酒でつけい! どちらが多く酒を飲めるかで決着つけい! 見届けはわしがする!」

 その宣言に、周囲の野次馬たちはオオッ、と歓声を上げた。 
 戸惑う二人をよそに、ゴンベエは酒家にいた客を巻き込んで、店の酒をどんどん道端に運ばせる。

「よっしゃ! 今日はワシが全部おごっちゃる! 皆もこやつらに負けぬ程飲めや!」

 そのゴンベエ言葉で、周囲にいた酒好きの野次馬が我も我もと酒をかっ食らう。

「「 ……………… 」」

 互いにバツの悪そうにしていた騒動の当事者たち。
 それを見てゴンベエは、ニヤッと笑った。

「どうした! お主等も早く飲まんと、そもそもの勝負にならんぞ? おおい、樽持ってきて、こやつらに飲ませてやれ!」
「「 ちょっ…… 」」

 ゴンベエの言葉に悪ノリした酒場の客が、奥から酒樽を転がしてくる。
 そして盃どころか、酒壺にその酒を入れて二人に渡した。

「よっしゃ! 死ぬ気で飲めっ! わし等も飲むぞぉ!」
「「「「 おおおおおおおおお! 」」」」

 すでに大混乱というより混沌とした酒宴の中、当事者たちは互いに意を決し、酒壺を抱えて飲みだす。
 いつしかそこは大宴会場のように、大騒ぎする場になっていた。

「なんて乱暴な……」

 それを唖然と見ていたのは曹操と夏侯淵だった。
 周囲の馬鹿騒ぎから少し離れたところで状況を見ていたのである。

「……しかし、刃傷沙汰は避け
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