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センゴク恋姫記
第4幕 権兵衛隊長始末記
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は曹操の治める陳留でも同様であった。

 だが、さすがに曹操が治める以上、酒に酔っての治安の悪化など許すはずもない。
 飲酒は認めても、酒に酔っての狼藉は固く戒めることを徹底させている。

「大酒飲みでもいるの?」
「いえ……それが、警備兵が毎日酒壺を持参してもらい来るそうです。それがゴンベエの隊のものらしく……」
「なっ――あの男、酒盛りさせているというの?」

 兵の士気をあげ、統率するのに酒を使うことは古来より常用されてきた手段である。
 しかし、代わりに酒乱による治安の悪化や暴力事件なども弊害としてよく起こるのである。

「ふん……まあ、その程度だったのかしらね」
「しかし、それならば酒乱による事件が起きていないことが疑問に残ります。あの男に宛てがったのは、経験不足の新兵ばかり。問題の一つも起こって当然と思うのですが」
「……そういえば、そうね」
「そしてここ最近の街の治安も、下がるどころか以前より少しよくなってきたとも思えるのですが……」
「……………………」

 酒乱による治安の乱れ、軍規の乱れは常にある。
 しかしそれがないどころか、治安が向上している事に違和感を覚える曹操。

「……ちょっと、街に出てみようかしら」

 そう呟き、自らの目で街の様子を視察することにした曹操。
 当然ながら、供に夏侯淵を連れて自身の治める街、陳留へと歩を進めた。

 すでに外は夕暮れ。

 各々の仕事を片付け、夕餉の支度に忙しい時間である。
 この時間は日本でも逢魔が時と言われ、日が落ち闇夜が覆い始める時間。
 現代と違い、街灯などないに等しいため、夜の明かりは星明かりに頼るしかない。
 それ故に犯罪が起こりうる頻度も高く、酒乱による治安の悪化も懸念される時刻でもあった。

 そんな中――

「てめえ! 表に出やがれ!」
「なんだとう!?」

 近くの酒家(居酒屋のようなもの)で乱闘騒ぎが起こる。
 酒が入ったことによる揉め事に、古今の差はない。
 あっという間に殴り合いの喧嘩に発展し、それが治安の悪い地域ならば刃傷沙汰になる。

 今回の騒動の張本人たちは、互いに一般人ではあったが……片方が包丁を持った酒家の主人であったことに、問題があった。
 すでに騒ぎを聞きつけた周囲の家人、酒家にいた客、通りすがりの者などの野次馬であふれている。
 その様子を見ていた曹操が眉を寄せ、夏侯淵が包丁を持つ主人を取り押さえようと動き出したその時――

「暫く! しばらくしばらくしばらく! しばらぁ〜くっ!」

 突如、大声にて間に入った者がいた。
 誰であろう、ゴンベエである。

「「 あっ……ご、ゴンベエの旦那! 」」

 それに対して声を上げたのが、騒動の当事者二人だっ
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