第4幕 権兵衛隊長始末記
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「秋蘭、あの男はどうしているかしら?」
「あの男……ゴンベエですか? ここしばらく、朝から晩まで街をうろついているようですが」
「へえ……」
夏侯淵の言葉に、曹操が目を細める。
曹操にしてみれば、仕事を割り振った当日に怒鳴りこんでくるのもあるかと思っていた。
無論、それをすれば取るに足らない人材というレッテルを貼るつもりではあったが。
「新人ばかり宛てがったのに、何も言ってこなかったわね。どうやって警備をするつもりかしら」
「さて……今回の件に先立ち、ゴンベエの担当区域だったこれまでの警備兵には、調練を兼ねて山賊討伐に当てていますし……自力でどうにかするしかないでしょう」
「そうね。けど、最近治安が悪くなったという報告も聞かないわね。どうやって維持させているのか見ものだわ」
「ふふふ……華琳様もお人が悪い」
夏侯淵の言葉に、くすっと笑う曹操。
曹操は、人を試すのに試練を与えてそれを乗り越えたものを有用とさせる傾向がある。
今でこそ曹操の両翼となる夏侯惇、夏侯淵ではあるが、その二人も同様だった。
「ふふ。でも、それぐらいやってもらわなければ、あの男にここで禄を食む価値はないわ。今後のことも考えて、ね」
「そうですね……やはり華琳様は、今後乱世が来るとお思いで?」
「当然よ。洛陽に腐った役人、宦官、そして皇帝に至るまで……この国はすでに末期に近いわ。必ず力で争う乱世が来る」
「……はい」
漢の腐敗はもはや国として末期の状態である。
誰の目にもわかるほど、不正の横行、役職が金で買える実情、能力に関わらず身分の差だけで貶められる風潮。
すでに組織の自浄作用など失われているのだ。
「その乱世を前に、おそらくは未来の……それも百年以上続く乱世からきたというゴンベエよ。その能力、気になるでしょ?」
「確かに……あの男は愚かな部分はありますが、歴戦の強者の風貌も感じます。少なくとも何度も修羅場をくぐっているのは間違いないかと」
「そうね。だからこそ……その実力を計るのよ。使えればよし、使えなければ切って捨てればいいわ」
そう言って目を細めて笑う曹操は、すでに人の上に立つ君主としての器量が垣間見える。
そしてその薄く笑う表情には、すでにその心底で蠢く覇王の顔が見え隠れてしている。
夏侯淵は、その身に言いようのない――寒気とも歓喜とも言える震えが身を疾走った。
「……御意。ただひとつ、気になることが」
「気になること?」
「はい。最近、城の備蓄庫から酒が大量に消費されているそうです。厨房から兵たちが持っていく量が増えたと報告がありました」
「……お酒が?」
兵の士気高揚のため、酒に関してはどの街でも規律が緩い。
それ
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