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センゴク恋姫記
第4幕 権兵衛隊長始末記
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 ゴンベエの夏侯惇のアダ名に、きょとんとしてすぐに吹き出す曹操。

「あ、貴方……今度は春蘭にそんなアダ名をつけたの?」
「うむ。オデコよりはよかろうが」
「プッ……ククク……」

 どうやら曹操のツボにもハマったようである。

「……っ、あー、うん。まあ、殺されない程度に仲良くなりなさい。今春蘭を呼ぶから……ぷっ」
「……そんなに面白いかのう?」

 こらえきれない笑いでむせながら、女官を呼ぶ曹操。
 ゴンベエは、どこが面白いのかとしきりに首をひねるのだった。 




  *****




「ちゅうわけで、わしが皆をまとめる事になった仙石ゴンベエじゃ。慣れんうちはいろいろ厄介をかけると思うが、よろしく頼む」
「「「 ハッ! 」」」

 ゴンベエは陳留の警備兵を見渡す。
 数にしても百名もいない。

(しっかし……どいつもこいつも野盗に毛が生えた程度の雑兵じゃのう。まるで初陣前の農民と変わらん)

 ゴンベエの目から見ても、任された警備兵の質は最低に見えた。
 そのことでゴンベエは、初めて兵の指揮を取ることになった徳川軍後詰での仙石隊初陣を思い出す。

(あん時の雑兵達や孫達を思い出すのう……足引っ張られるのは目に見えとる)

 兵の質については、ゴンベエの指揮能力を見るためにわざと新人ばかりを組織した曹操の思惑がある。
 しかし、ゴンベエはそんなことは思いもせず、これがこの時代の警備兵の実力だと思っていた。

「ともかくじゃ……まずは今までどうやっていたかをわしに教えてくれんか?」
「「「 ……………… 」」」

 ゴンベエの言葉に顔を見合わせる警備兵。

「ん? どうしたんじゃ?」
「いえ……正直申します。我々も警備隊として配属されましたのは、今回が初めてでして」
「なにをどうしていいのかは……正直わかりかねます」

 ゴンベエが訝しげな目で皆を見回しても、同様に頷く者や目をそらす者ばかり。
 ここに至ってようやく曹操の策略に気づくゴンベエであった。

 だが、そこはさすがに経験が豊富なゴンベエである。

(つまり――好きにやれっちゅうことか)

 自分の身一つで一万石になったのは伊達ではない。
 もし、この時点で曹操に問い詰めにでも行けば、曹操は大いに落胆しただろう。
 ここは、自分なりに動いてまとめる器量が問われている――
 誰かに聞くのではなく、本能でそれを悟ったゴンベエ。

 この場に孫やソバカスがいればこう思っただろう。

『上司に叱られ慣れているからこそ、本能でどうすればいいかわかるのだ』と。

「ほうかい……じゃあ、わしのやり方でやろうかの」

 そういったゴンベエは、ニヤリと笑っていた。





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