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センゴク恋姫記
第4幕 権兵衛隊長始末記
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う夏侯惇。
 その太刀筋が若干早くなり、本気で焦るゴンベエだった。

「お惇……か。では私はお(えん)か? ふふっ……おとん、おえん……ふふふ……」
「「 ……………… 」」

 と、傍でそれを見ていた夏侯淵である。
 なにかツボにはまったらしい。

 思わずそれを見て顔を見合わせる夏侯惇とゴンベエであった。




  *****




「ということで、貴方の仕事が決まったわよ」
「……仕事?」

 質問攻めから開放された翌日、ゴンベエは曹操に呼び出されていた。

「当然でしょ? 働かざるもの、喰うべからずよ。今までは貴方の情報分として衣食住をまかなっていたけど、まさかなにもしないで今後もご飯が食べられるとでも?」
「いや……まあ、当然じゃの。本来なら路銀はあったんじゃが……こっちでは使えんのじゃし」

 ゴンベエの持つ路銀は永楽銭である。
 だが、貨幣価値が違うこの世界では、単純な銅としての価値しか持たない。
 簡潔に言えば、ゴンベエは無一文に近い状態だった。

「で、なにをすればええんじゃ? 自慢ではないが、わしは馬鹿じゃから事務方は得意ではないぞ?」
「本当に自慢にもならないわね……これで領主だったっていうのが信じられないわ」
「細々としたことは、全部川坊にまかせていたからのう」

 所務においては、守役だった川爺の孫である川坊が一切を取り仕切っていた仙石家である。
 仙石家は当主であるゴンベエを戦働きに特化させ、領地の政務は親戚一同で行うという武力でのし上がった武将によくある体制をとっていたのである。

「そうねぇ……貴方個人の武力は見せてもらったけど、統率力が見たいわ。とりあえず警備兵の隊長にしておいたから、しばらくそちらで働きなさい」
「警備兵……この街のか? 足軽頭みたいなもんかのう……」
「足軽……兵をまとめるという意味ではそうかもね。ご不満?」
「いんや。こっちのこともまだよくわかっておらんし、ちょうどええかもしれんの。この歳で一兵卒というのもなんじゃが」
「……その姿で勘違いしそうだけど、本当に貴方三十路なの?」

 今のゴンベエは、十五、六の若武者の姿である。

「……なんか自分でもわからなくなるときがあるがの。わしは齢三十一じゃ」
「……まあ、いろいろ話を聞いたから一応は信じてみるけどね。けど、あんまり他人に本当の歳を言わないほうがいいわよ。気狂いと思われるでしょうから」
「そうじゃのう……ま、しゃああんめえ」

 ポリポリと頭を掻きつつ、嘆息するゴンベエ。

「とりあえず、歳は十八ぐらいとしておきなさい。警備兵の詰所については春蘭に案内させるわ。詳しくは彼女に聞きなさい」
「お惇か……ま、よかろ」
「……ブッ!」


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