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センゴク恋姫記
第4幕 権兵衛隊長始末記
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石の領主じゃが、さほど偉くないぞ? 五千石なら神子田や尾藤もそうじゃし、羽柴様の寄騎としては確かに一番ではあったがのう……」
「羽柴……それって、貴方の上司?」
「うむ。羽柴筑前守秀吉様……わしは昔から籘吉郎様の寄騎として付けられての。子飼いではないが、寄騎としては一番の古株じゃ」
「羽柴筑前守……その筑前守が官名かしら?」
「うむ。元は農民であったからの。旧名は木下籘吉郎様じゃった。改名して羽柴籘吉郎秀吉様になり、今は筑前守を名乗っておる」
「ふむ……官名を名にするからコロコロ変わるのね。そうなると他者は、姓と諱で呼ぶのも仕方がないと……そうね、確かに風習ってものは処変わればってことかしら」

 ゴンベエはイマイチ理解できていないが、これは曹操の知能指数が高いことを意味する。
 曹操ほどの聡明さでなければ、これほど難解な風習の違いをすぐに理解できるわけもない。
 元々の予備知識もなく、これだけの差異を理解する事こそ、曹操の英傑たる所以でもあった。

「わかったわ。その羽柴って人についても後で――」

 このような感じで曹操は、ゴンベエの話から情報を引き出してゆく。
 こうしたやりとりは、この後数日間にも及んでゆくのであった。




  *****




「せええい!」
「どわっ!?」
「ふんっ!」
「だああああっ!?」
「〜〜〜〜〜〜〜〜っ! 貴様! やる気が無いのか!?」

 思わず叫ぶ夏侯惇。
 手に持つ大剣をぶん、と振り回しながら叫ぶ姿は、まさしく鬼女である。

「無理言うなっ! お前さんの太刀筋は殺気がありすぎじゃ! わしを殺す気かいっ!」
「当然だ! 殺すつもりでなければ訓練にならん!」
「訓練で死んだら元も子もないじゃろが!」
「ごちゃごちゃと言い訳がましいぞ、貴様! いいから我が大剣の錆になれ!」
「なってたまるかっ!」

 叫びながらも剣を止めない夏侯惇。
 その大剣の風圧に肝を冷やしながらも、何とか避けるゴンベエ。
 はたから見れば実力伯仲に見えなくもない。

 しかし、実際はこれでも手加減している夏侯惇に対し、内心本気で逃げているゴンベエであった。

「ええい! これでは訓練にならんではないか! 貴様も私を殺す一歩手前まで追い込んだのなら、正々堂々戦ってみろ!」
「冗談じゃないわい! お(とん)とまともにやったら、刀が折れるわ!」

 ゴンベエの言葉に、ピタッと動きを止める夏侯惇。

「……ちょっとまて。お惇とは、私のことか?」
「そうじゃ。夏侯惇なんて呼びづらいじゃろうが。惇が名ならお惇でよかろう?」
「誰がおとんだ! 私は父親ではないぞ!?」
「男みたいな名前のくせに何怒っとんじゃ!?」

 更に顔を赤くして大剣を振る
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